Molecular Biology 728x

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Transcription入門

Contents:
  1. 2つのキーQuestion
  2. RNAの転写に必要なこと。
  3. RNAポリメラーゼとDNAポリメラーゼの比較
  4. Transcriptionを測るassayたち
  5. Incorporation Assay
  6. Primer Extension AssayでTSSを調べる
  7. RT-PCR
    1. Real Time PCR
  8. RNA-SeqによるGlobal Transcriptionのassay(RNA-seqと書かれる事も)
  9. GRO-Seq
  10. 次:バクテリアのTranscription入門

2つのキーQuestion

  • Specificity: RNAポリメラーゼはどのように目的のgenesを識別しているのか?
  • Efficiency: どのくらいの頻度でgeneは転写されるのか?

RNAの転写に必要なこと。

1ページ

  1. dsDNAテンプレート
  2. rNTP

RNAポリメラーゼとDNAポリメラーゼの比較

共通の項目

同じ項目 RNAポリメラーゼ DNAポリメラーゼ
3’末端にだけ追加 Yes Yes
塩基の追加にはDNAテンプレートが必要 Yes Yes
4つのrNTPs/dNTPsのどれに対しても一つのアクティブサイトで賄う Yes Yes

異なる項目

違う項目 RNAポリメラーゼ DNAポリメラーゼ
使われるNTPs rNTPs dNTPs
プライマーが必要か? 不要 必要
fidelity 10^4 bpに一回のミス もっとずっと少ない
rate 60-100 nt/sec 1000 nt/sec
processivity 4000 nt/binding 以上 より低い
DNA strandsのコピー 一方向で、1 strandだけコピー 両方のstrands

Transcriptionを測るassayたち

Gene by Gene Expression

  • Incorporation Assay
  • Primer Extension Assay
  • RT-PCR

Global Transcription

  • RNA-Seq
  • GRO-Seq

Incorporation Assay

DNAポリメラーゼの活動の計測と同様のassay。 ラベルとしてはrNTPのうちrUTPを使う事が多い。

生産物を分離する方法はDNAポリメラーゼの時と同様にFilter BindingかGel Electrophoresisを使う。

Gel Electrophoresisの場合はRNAが折りたたまれてしまう問題に対処する必要があるので、 denaturing gelを使う事。

denaturing gelとしてはたくさんの尿素をゲルに含めるのが手頃。

また、Transcriptionの結果を分析する場合、initiationはpreciseだがterminationはimprecise(開始地点はいつも同じだが終了場所はばらつきがある、という事か)という事にも気をつける必要がある。

そこで、run-off transcription assayと呼ばれる手法を使う。

2ページ

メリット デメリット
早い Start siteは分からない
定量的  

Primer Extension AssayでTSSを調べる

DNAポリメラーゼの活動の計測と同じようなassayだが、目的も使う道具も違う。今回はTranscription Start Sitesを調べるのに使う。

3ページ

  • 生成されるRNAを何らかの方法で分離する
  • TSSの下流の部分に対応するRNAの部分に結合するssDNA primerを作り、5’の方にラベルづけする(部位が一意に決まるように25ntとかの長さ)
  • reverse transcriptaseで逆転写する
  • denaturing gelで分離して生成されたDNAの長さを測る(長さを知りたいので分解能の高いacrylamide gelを使う)

結果の長さを測る事で結合した場所から端までの場所が分かり、シーケンスのどこがTSSかを特定する事が出来る。

reverse transcriptaseはテロメアの所でtelomeraseとして登場していた。他にもレトロウィルスなどで出てくる。

メリット デメリット
5’末端の正確な情報が得られる 一度に一つのgeneについての情報しか分からない
  sensitivityがlow〜medium程度(少量発現するgeneには向かない)

RT-PCR

目的のRNAがどれだけ存在しているかを調べるassay。

Reverse Transcriptase PCR。略してRT PCR。ただしこれはReal Time PCRと組み合わせて使う事も多く、その場合は RT RT-PCRになる。

4ページ

手順

  1. RNAを分離
  2. 2つのペアになっているDNAプローブを作る。geneの3’末端側をターゲットにする。(3’末端があればtranscriptionが終わっている事が保証出来るから)
  3. RNAに2つのDNAプローブをアニールする(片方だけRNAとはアニールする)
  4. Reverse TranscriptaseでアニールしたDNAをextend
  5. thermophilicなDNAポリメラーゼを使ってPCRする
  6. Non-denaturing gelで分離するか、Real Time PCRでモニターする。

これで目的のRNAが相対的にどのくらい多く存在しているかを確認出来る。

利点 欠点
とてもsensitive(少量のRNAでも検出出来る) 一度に一つのgeneしか分からない
  5’末端がどこかは分からない

数十のオーダーのRNA分子でも検出出来るらしい。頑張れば一つも可能と言っているlabもあるとか。

少しノートがわかりにくかったので補足。2つのDNAプローブは、ノートの一番上に書いてある、目的の配列を含む左から右と右から左の2つのDNA片。 これでReverse Transcriptaseでどちらか片方のDNA片がextend出来てcDNAが作れて、このcDNAをもう片方のDNAをprimerとしてPCR出来る。

Assays

Real Time PCR

dsDNAの生成物を染めるdyeを使って、生成物が増えていく量を時間とともに観測する手法。 no template controlも加えてlinearの範囲を過ぎてない事を確認する必要がある。 少し汚染されてるだけでも大量に増幅するとそれが見えてしまう事があるから。

RNA-SeqによるGlobal Transcriptionのassay(RNA-seqと書かれる事も)

Deep sequencingを使って細胞全体について調べる。

  1. RNAを分離(in-vivo)
    • mRNAをリボソームRNAやtRNAから分離する
    • Eukaryotic cellではRNAにたくさんのAのテールがある(poly A tail)ので、oligo dTのカラム(ビーズ)で分離出来る。
    • Prokaryotic cellsでは5’末端に3リン酸が無いRNAを除去する方法があり、rRNAやtRNAの多くは3リン酸が無いので除去出来る。
  2. mRNAのcDNAを作る(6merのRandom primersとreverse transcriptaseで作る)
  3. cDNAを300〜500bp程度のサイズに切断する
  4. Deep Sequencingする

これで存在しているmRNAの量が測れる。

Deep SequencingについてはOriginを見つける3つのassayの「Nascent Okazaki Fragment Mapping」も参照。 同じようにbinningしてそのbinの中で開始しているフラグメントの数を数える。

利点 欠点
転写された全geneについての情報が得られる 本質的には定量的では無い(しかしrelative quantitationは出来る)
  steady stateのRNAレベルを測っている(転写の量では無い)
  • relative quantitationとは2つの異なる種類の細胞に同じ手法を使って、相対的な量の違いを調べる事は出来る。
  • steady stateの情報は、transcriptionのレートだけでは無く、turnoverのレートも影響したものになってしまっている。

GRO-Seq

  • striatal cell 線条体細胞

Global Run On Sequencingの略。run onはどんどん進む、進行する、というような意味。

RNA-SeqはあるRNAのstabilityが観測結果に影響を与えるので、Transcriptionについて調べたい時には不都合な面がある。 GRO-Seqは転写をしているRNAポリメラーゼを捉える事で転写についての直接的な情報が得られる。

手順

  1. 核を単離するか細胞をpermeabilizeするかする
    • 核の外部のrNTPはほとんど無くなる(溶けて薄まってしまってなくなる)
  2. BrUTPとrNTPを加える
    • RNAポリメラーゼがこのあとに合成をしたものはBrUTPを含む事になる
    • initiationの所は見ていないが、合成を続けている(run on)RNAポリメラーゼの活動を見ている事になる
  3. RNAを分離
  4. BrUのantibodyを使ってBrUMPを含んだRNAをimmunoprecipitateする。
  5. 3’末端と5’末端で異なるprimerをligateする
  6. Reverse transcriptaseを使ってDNAを作り、出来たssDNAにプライマーをつけて通常のDNAポリメラーゼでdsDNAを作る
  7. Deep Sequencing

BrUTPはBromoのanalogue(PngNoteの5ページも参照)。 BrUTPを含むRNAを識別するantibodyが作れる。

5ページ

eukaryoticの細胞ではTSSにRNAポリメラーゼがくっついて、そのままとどまっているというケースが凄く多いので、 進んでいるかどうかの違いは重要。

このassayの利点としては、進行中のtranscriptionの情報が得られる、という事。

このassayで、eukaryoticの細胞ではRNAポリメラーゼがTSSからgeneの側に進むものと、反対側に進むものの両方がある事が判明した。 ただgeneの反対側に進んで合成されるRNAはとてもunstableですぐに分解されてしまうからRNA-Seqでは見えない。 eukaryoticの細胞の多くのプロモーターはRNAポリメラーゼを両方に進める模様。

追記: 新しくRNA Polymeraseが合成を開始してしまうのはsarkosylというので防ぐらしい。

次:バクテリアのTranscription入門

バクテリアのTranscription入門