Originを見つける3つのassay。
originを見つけるassayは、originと関連する何らかのssDNAを検出するのが基本。
以下の3つのassayについて議論する。
- Nascent strand mapping
- Nascent okazaki fragment mapping
- Replication timing assay
1. Nascent strand mapping (High throughput assay)
Originを見つけるassayの一つ。フォークのうちleading strandの方が長いのを利用してleading strandを見分ける。
Nascent strandの特徴
長いleading strand DNAをマップする。どうやってnascent strand DNAだと判定するか?
- 岡崎フラグメントより長い
- RNA primerがついている
の条件を満たすものがnascent strand DNAと思われる。
これらの特徴を持つssDNAをどう検出するか?
検出方法
- 細胞分裂している細胞から始める(asynchronousで構わない)
- DNAをdenatureする(温度+denaturant (尿素が良く使われる))
- lambda exonucleaseで処理する
- これは5’ー>3’の DNA exonuclease
- RNAが5’側の端に残っているものは分解されない
- 処理には12〜24時間かかる
- denaturing agarose gelでゲル電気泳動して長いssDNAを分離する
- 岡崎フラグメントより長いものを残す
- 岡崎フラグメントの長さは生物によって違う
- E. coliなら1kbくらい。だから1.5kbより長いのを残す。
- Eukaryoticなら200-400bpくらい。なので0.6kb以上とかで残せば良い。
ステップ3でRNAプライマーが残っているDNA片だけが残る。
分解残りのゴミなども残るが、長いものがnascent strand DNAなのは間違いないので長い方だけ見れば良い。
これでnascent strandが得られる。分析には幾つかの方法がある。
originがどこかを知っているならPCR
originがどこかをすでに知っている場合は、PCRのプライマーをoriginのそばにセットする事でPCRで調べる事が出来る。
originからどれくらい離れているかを8段階くらいに分けて、PCRしてみるのが典型的。
originがどこか知らない場合はDNAシーケンシングかmicroarray analysis
最近はDNAシーケンシングしてしまうのが主流。
どうやってnascent strandをDNAシーケンシングするか?
nascent strand DNAはssDNAだが、シーケンシングは普通dsDNAに対して行うもの。
どうやってdsDNAを作るか?
- ランダム9-mersとannealing
- DNAポリメラーゼを加えてprimerをextend
- シーケンス用プライマーを加える為に、dsDNAを4bp recognizing restriction enzymeで1〜3bpカットする
- DNAリガーゼを使って両端にoligosを追加
- シーケンシングする
ランダムな9 bpの配列のDNA片を作ってアニーリングさせる。全種類が無くても十分多ければだいたいマッチする、的な考え方。
30bpもあればほとんどの生物の配列の中でユニークに位置を特定出来るので十分。
オリゴヌクレオチド… 20塩基程度の短いDNA配列の事。
シーケンシング出来れば、あとはゲノム配列全体のどこに対応するかをマッピングすれば、originがどこかが分かる。
Deep Sequencing
大量のDNA片の短いDNAシーケンスを一気に解読する手法。
Nascent strand mappingの長所、短所
- 長所: 前提知識がほとんど要らない(全体のゲノム配列だけ知っていれば十分)
- 短所: Low resolution - 2〜5kb
Drosophilaの例では、200kbのうち10箇所くらいのoriginが見て取れる。20kbに一回くらいの割合でoriginがある。
各ピークの幅は5kb程度。
なぜlow resolutionかと言えば、nascent strandは割合がすごく少ないから。岡崎フラグメントとつながってしまえば、originの情報は一部失われてしまう。
2. Nascent Okazaki Fragment Mapping
DNA ligaseの適切なミュータントが必要だが、もし行えれば高い解像度が得られる手法。
手順
strandednessを識別する必要がある(ワトソン側かクリック側か)。
- DNA ligaseの活動を抑制する(あまり長く抑制していると細胞が死んでしまうが、30分とか1時間とかなら平気ないきものが多い)
- イーストでDNA ligaseのちょうど良いミュータントが知られている
- 他の生物でも探されていて、見つかりそうと期待されている
- denatureしてサイズでOkazakiフラグメントを分離する(ゲルでも出来るが、ion exchange columnで分離するのが普通)
- dsDNAにしてシーケンシングする
- strandednessの情報を維持する必要がある
人間のY染色体のような例外を除けば、dsDNAの二本はそれぞれ違う配列になっているので、単にマッピングを行えばどちらかは分かる。
シーケンスして行う事
- フラグメントのシーケンシングをして、それをゲノム配列にマッピングする(最初に一致した位置を使う)
- 50bpとかでbinningして、そこで始まっているフラグメントの数を数える(30〜50bpのビンが良く使われる)
- binningする事でフラグメントの数がそこまで大量でなくてもbinを十分カバー出来る
- 各塩基でカウントしようとすれば、十分の頻度を稼ぐ為には全ゲノムの数百倍のDNAをシーケンスする必要がある。
- 上をワトソン、下をクリックとしてカウントしたヒストグラムをプロット
>ワトソンからクリックへと急激に遷移している所がオリジン
- フォークがぶつかる所(terminatorと呼ぶ)では、okazakiフラグメントはお互いに離れる側に伸びているのでそれも分かる(originと比較すると徐々にstrandednessが変わる)
解像度は200bp〜500bpの高解像度が得られる!
シグナルの量も多い。ちょうどRNA primaseが残っているタイミングを得る、というようなタイミング的厳しさが無いから。
長所と短所
- 長所: 高解像度
- 長所: Efficiencyの情報も得られる
- 短所: DNA ligaseを抑制出来る必要がある
30bpは平均して4^30
ゲノムに一回当たる頻度なので、ほぼ一意。
現実的には8bpくらいでもだいたいユニーク。
3. Replication Timing Assay
originは付近のDNAよりも先に複製されるという事実を利用する。
手順
- synchronousな細胞群でreplication開始前のものたちを用意する
- 開始前の時点で幾つかのサンプルを取得(unreplicated DNA)
- synchronouslyにSフェーズを開始する
- 複製の間、定期的にサンプルを取っていく(複製にかかる時間は生物によって数分から15〜20時間までまちまち)
- unreplicatedを赤に、replicatedなタイミングで取得していったものを緑にラベルする
- Denature DNA
- ランダム9-mer DNAプライマーを追加
- fluorescent dTTPとDNAポリメラーゼでextend
- unreplicatedとreplictedのDNA量を同じ量にして混ぜて、microarrayにかける(個々が60bpの配列)
- 260の吸光で量を同じにするか、同じナノグラムを加えるかする
microarrayは、replicatedとunreplicatedが同じ数なら黄色、repliatedが多ければ緑の度合いが増す。
色から両者の比率が分かる。
unreplicatedな方は染色体のどの位置も同じ数だけある。
replicatedな方は複製中の範囲は、他の場所の2倍ある。
originのあたりは緑の度合いが高いはず。
hybridizeしやすい配列としにくい配列があるが、ratioを比較しているので問題無い。
長所と短所
- 長所:前提知識が要らない
- 長所:特殊なミュータントを必要とせずどの生物でも使える
- 短所:解像度はいまいち(1〜3kb)
次:ReplicatorMapping
ReplicatorMapping