CellBiology706x

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UbiquitinationとDegradation

Contents:
  1. UbiquitinとSUMO
  2. Ubiquitinの2つの形態
  3. Ubと265 proteasomeによる分解(proteolysis)
  4. Degradationの意義
  5. NF-kBによるUbiquitinationを利用したシグナルの例 ー Degradationの使われ方
  6. Wntシグナリング ー Degradationの使われ方の例、その2
  7. Proteolytic cleavage
    1. Caspaseとアポトーシス
  8. Notch-Delta pathway

シグナリングの一部にdegradationがある場合がある。 そのdegradationのメカニズムについて以下で議論する。 変更を実現するメカニズムの一つだが、内容が豊富なので独立したページにする。

UbiquitinとSUMO

これまで、Post Translational Modifications (PTMs) としてリン酸化を観てきた。 でもリン酸化の他にも重要なカテゴリとして、小さなタンパク質を付加する、というmodificationがある。

このカテゴリで重要なタンパク質としては以下の2つがある。

  • Ubiquitin (Ubと略される)… どこにでもあるタンパク質。76AA。
  • SUMO (Small Ubiquitin-like MOdifier)

どちらも10kDa以下の小さなタンパク質。 Lysineに共有結合で付加される。

Ubiquitinの2つの形態

Ubiquitinには以下の2つの形態がある。

  • monoubiquitin … 単体のUbiquitinが結合する
  • polyubiquitation … ターゲットとなるタンパク質のLysineに1つ目のUbiquitinが繋がり、その先にいくつもUbiquitinが繋がった形態(polyubiquitinと書いてある場合もあるがどっちが正解?)

plyubiquitationはdegradeの目印として機能するので重要。

Ubと265 proteasomeによる分解(proteolysis)

Ubがターゲットのタンパク質にpolyubiquitationの形で連なると、265 proteasomeがこれを識別し、ターゲットを分解する。 この過程でUbは分離して再利用される。 この分解をproteolysisと呼ぶ。

Ubがくっついていく過程には3つのEnzymeが関わっている。E1, E2, E3 Ubiquitin ligaseだ。

PngNoteの14ページ

  • E3 Ubiquitin ligase … ターゲットにくっついてどこにUbを足すかを示す
  • E2 … UbをE3 Ubiquitin ligaseに渡す
  • E1 … UbをE2に渡す

なお、E1は2種類しか知られていない。E2は20種類程度。E3 Ub ligaseは数百種類以上。キナーゼと同じくらいのオーダーの種類。

キナーゼと同様、この過程も凄くいろいろな所で使われていて、様々なE3があってそれぞれspecificityを持っている。

今後細胞分裂の講義で登場するE3の例としては以下の2つがある。

  • SCF
  • Anaphase Promoting Complex (APC/C)

Degradationの意義

わざわざATPを使って合成したタンパク質を分解するのはなぜか?エネルギー的にはもったいない事のように思えるが。

Degradationの特徴として、irreversibleというのがある。 一度分解すると再合成されるまでそのタンパク質は無くなる。 再合成は数時間とか1日とか掛かる話で、数秒とかのオーダーでは完全にirreversible。

例えば細胞分裂のサイクルなどでは、G1, F, G2, Mといったフェーズに遷移していく。これは一方通行で遷移して欲しい。 こうした用途にはdegradationは素晴らしい機構となる。

NF-kBによるUbiquitinationを利用したシグナルの例 ー Degradationの使われ方

NF-kBのkはカッパと読む。NF-kBはIkBという別のタンパク質と結合した状態でいる。 Iはinhibitorの意味で、この状態ではinactive。 cytoplasmに存在するタンパク質複合体。

シグナリングpathwayの結果としてIkBがキナーゼによってリン酸化されると、 E3 Ub ligaseがIkBを認識するようになってpolyubiquitinateされる。 すると265 proteasomeがこれを見つけてIkBを分解する。

IkBが分解されるとNF-kBの隠されていたNLSが露出するようになり、核へと運ばれ、Transcription factorとして働く。

なお、265 proteasomeを止めたい時はMG132などのproteasome inhibitorを使う事が出来る。

Wntシグナリング ー Degradationの使われ方の例、その2

PngNoteの14ページ

細胞膜に2つのレセプターがある。一つはLRP。もうひとつはFrizzledと呼ばれるもので、7 transmembraneドメインがあるレセプター(ただしGPCRでは無い)。

cytoplasm側にはGSK3と呼ばれるキナーゼがあり、これが2つのタンパク質と結びついている。 一つはAPC (Adenoma Polyposis Coli)、もうひとつはAxin。

最初、unstimulated stateでは、cytoplasm内でキナーゼはいつもactiveで、β-cateninと呼ばれるタンパク質をリン酸化している。

β-cateninはリン酸化されるとubiquitinationのシグナルとみなされ、ubiquitinationされてdegradationされる。 これが普段は繰り返されている。

隣の細胞のWntがやってくると、2つのレセプターは細胞内のAxinを引きつける。 するとGSDK3のキナーゼの活動が抑制され、β-cateninが分解されなくなる。

分解されなくなると、細胞核へと輸送されてTranscription factorとして機能するようになる。

Proteolytic cleavage

シグナリングの方法として、タンパク質を裁断する、というものもある。プロテアーゼが裁断する。 これもirreversibleなシグナルの一つ。

Proteaseにはspecificityがあるものと無いものがある。

  • general … Protease Kなど。全てのアミノ酸間の結合をカットする。
  • amino acid directed … Trypsinなど。TrypsinはKかRの後をカットする。
  • very specific … TEVプロテアーゼ、ENLYFQ(ここをカット)G 。7つの塩基配列!イースト菌でこの配列が現れるのはたった2つ!

裁断すると何が起こるか?2つのケースがある。

  • タンパク質の分解を引き起こす
  • タンパク質のactivityを変更する

前者は前述のE3 degradationとそんなに変わらない結果となる。

細胞分裂のコースでは、separaseというプロテアーゼが登場する。これはmitosis(有糸分裂)でsister chromatinをカットして分離する。

ここでは別のプロテアーゼの例、caspasesを見ていく事にする。

Caspaseとアポトーシス

アポトーシスのpathwayも参照。

caspasesはcell death、つまりアポトーシスに関わるプロテアーゼ。 これには2つの状態がある。

  • Procaspaseという状態。Inactiveな形態。これはenzymatic domainの左右にasparatateを挟んで他のドメインがつながっている。
  • Activeなcaspaseという状態。Procaspaseがasparatateで切断されるとEnzymatic domainだけが残りActiveなcaspaseとなる。

この2つの状態をシグナリングpathwayが制御する。

  1. Initiator caspaseがやってくる
  2. downstreamのcaspase、Effector caspaseと呼ばれるものをcleaveする
  3. 細胞内のさまざまな物質を分解していく

この最初のinitiator caspase自身も同じような仕組みでactivateされる。 つまり全体を見ると以下のようなプロセスとなる。

  1. initiator procaspaseの状態から始まる
  2. adaptor protein complexesが2つのinitiator procaspaseを近くに配置する
  3. お互いをカットしてactivated initiator caspaseとなる
  4. effector caspaseをカットしてactivateする>いろいろ分解する

Notch-Delta pathway

PngNoteの15ページ

隣の細胞のtransmembraneタンパク質のデルタがこの場合はリガンドとして機能する。 Notchがレセプターとしてこれと結合すると、2つのproteaseを引き寄せる。

一つはPresenilinで、これがNotchの細胞質側を切り離す。すると切り離された先にあるNLSにより、核に運ばれ、transcription factorとして機能する。

もう一つのproteaseはADAM10で、これがNotchの細胞の外側をカットして、Deltaが再び使えるようにする。

隣の細胞からのシグナルをparacrine signalingと呼ぶ?ここではNotch-Delta pathwayとWntシグナリングがそれか。