シグナリングの一部にdegradationがある場合がある。 そのdegradationのメカニズムについて以下で議論する。 変更を実現するメカニズムの一つだが、内容が豊富なので独立したページにする。
これまで、Post Translational Modifications (PTMs) としてリン酸化を観てきた。 でもリン酸化の他にも重要なカテゴリとして、小さなタンパク質を付加する、というmodificationがある。
このカテゴリで重要なタンパク質としては以下の2つがある。
どちらも10kDa以下の小さなタンパク質。 Lysineに共有結合で付加される。
Ubiquitinには以下の2つの形態がある。
plyubiquitationはdegradeの目印として機能するので重要。
Ubがターゲットのタンパク質にpolyubiquitationの形で連なると、265 proteasomeがこれを識別し、ターゲットを分解する。 この過程でUbは分離して再利用される。 この分解をproteolysisと呼ぶ。
Ubがくっついていく過程には3つのEnzymeが関わっている。E1, E2, E3 Ubiquitin ligaseだ。
なお、E1は2種類しか知られていない。E2は20種類程度。E3 Ub ligaseは数百種類以上。キナーゼと同じくらいのオーダーの種類。
キナーゼと同様、この過程も凄くいろいろな所で使われていて、様々なE3があってそれぞれspecificityを持っている。
今後細胞分裂の講義で登場するE3の例としては以下の2つがある。
わざわざATPを使って合成したタンパク質を分解するのはなぜか?エネルギー的にはもったいない事のように思えるが。
Degradationの特徴として、irreversibleというのがある。 一度分解すると再合成されるまでそのタンパク質は無くなる。 再合成は数時間とか1日とか掛かる話で、数秒とかのオーダーでは完全にirreversible。
例えば細胞分裂のサイクルなどでは、G1, F, G2, Mといったフェーズに遷移していく。これは一方通行で遷移して欲しい。 こうした用途にはdegradationは素晴らしい機構となる。
NF-kBのkはカッパと読む。NF-kBはIkBという別のタンパク質と結合した状態でいる。 Iはinhibitorの意味で、この状態ではinactive。 cytoplasmに存在するタンパク質複合体。
シグナリングpathwayの結果としてIkBがキナーゼによってリン酸化されると、 E3 Ub ligaseがIkBを認識するようになってpolyubiquitinateされる。 すると265 proteasomeがこれを見つけてIkBを分解する。
IkBが分解されるとNF-kBの隠されていたNLSが露出するようになり、核へと運ばれ、Transcription factorとして働く。
なお、265 proteasomeを止めたい時はMG132などのproteasome inhibitorを使う事が出来る。
細胞膜に2つのレセプターがある。一つはLRP。もうひとつはFrizzledと呼ばれるもので、7 transmembraneドメインがあるレセプター(ただしGPCRでは無い)。
cytoplasm側にはGSK3と呼ばれるキナーゼがあり、これが2つのタンパク質と結びついている。 一つはAPC (Adenoma Polyposis Coli)、もうひとつはAxin。
最初、unstimulated stateでは、cytoplasm内でキナーゼはいつもactiveで、β-cateninと呼ばれるタンパク質をリン酸化している。
β-cateninはリン酸化されるとubiquitinationのシグナルとみなされ、ubiquitinationされてdegradationされる。 これが普段は繰り返されている。
隣の細胞のWntがやってくると、2つのレセプターは細胞内のAxinを引きつける。 するとGSDK3のキナーゼの活動が抑制され、β-cateninが分解されなくなる。
分解されなくなると、細胞核へと輸送されてTranscription factorとして機能するようになる。
シグナリングの方法として、タンパク質を裁断する、というものもある。プロテアーゼが裁断する。 これもirreversibleなシグナルの一つ。
Proteaseにはspecificityがあるものと無いものがある。
裁断すると何が起こるか?2つのケースがある。
前者は前述のE3 degradationとそんなに変わらない結果となる。
細胞分裂のコースでは、separaseというプロテアーゼが登場する。これはmitosis(有糸分裂)でsister chromatinをカットして分離する。
ここでは別のプロテアーゼの例、caspasesを見ていく事にする。
アポトーシスのpathwayも参照。
caspasesはcell death、つまりアポトーシスに関わるプロテアーゼ。 これには2つの状態がある。
この2つの状態をシグナリングpathwayが制御する。
この最初のinitiator caspase自身も同じような仕組みでactivateされる。 つまり全体を見ると以下のようなプロセスとなる。
隣の細胞のtransmembraneタンパク質のデルタがこの場合はリガンドとして機能する。 Notchがレセプターとしてこれと結合すると、2つのproteaseを引き寄せる。
一つはPresenilinで、これがNotchの細胞質側を切り離す。すると切り離された先にあるNLSにより、核に運ばれ、transcription factorとして機能する。
もう一つのproteaseはADAM10で、これがNotchの細胞の外側をカットして、Deltaが再び使えるようにする。
隣の細胞からのシグナルをparacrine signalingと呼ぶ?ここではNotch-Delta pathwayとWntシグナリングがそれか。