これまではRNAの転写までを見てきたので、ここからはRNAからタンパク質へのTranslationを見ていく。
RNAからタンパク質合成の触媒となるところの多くはRNAで出来ている。生物の起源はRNAだったのでは無いかと思われている。
ORF (Open Reading Frame)は良く出てくる言葉だが定義はなんだろう? AUGのスタートCodonから、ストップCodonまでの、ストップCodonを含まない範囲、という感じか。
ほとんどの生物でstart codonはAUGだが、たまに例外もある。だが例外でも、最初のコドンに対応したアミノ酸がMethionineなのは変わりない。
Eukaryoteと違って、一つのmRNAが複数のタンパク質をエンコードする場合がある。 mRNAが複数のタンパク質をエンコードすることをpolycistronicと呼ぶ。 cistronは歴史的な経緯でかつてORFのような領域とみなされていたところ。
ウィルスなどにごく一部例外もあるが、基本的にはpolycstronicでもORFがオーバーラップすることは無い。
また、一つのmRNAが関連する複数のタンパク質をエンコードしている場合、これをoperonと呼ぶこともある。
配列としてはGGAGG。スタートcodonの3〜9nt upstream側(5’側)にある。
リボソームのSmall Subunitの一部である16S rRNAはCCUCCという領域を持っていて、これがRBSとペアリングする。 これにより、Small Ribosome Subunitが動員される。
polycistronic なケースでRBSが複数ある場合、Ribosomeが結合する順番は任意。前のRBSが結合しないと次が結合出来ないということは無い(この性質をno polar effectと呼ぶ)。
ただし、以下のようなケースではPolar Effectが見られる。 それは、翻訳したRibosomeが、terminationの後にすぐ次の翻訳を開始するようなケース。 これが起こるのは以下のような配列の時。
5' - AUGA - 3'
UGAが最初のORFのストップCodonとして解釈されて、その後に一つ塩基を戻って次のORFのスタートCodonと解釈して再翻訳が始まる。 (ノートの1ページも参照のこと)。
このケースの場合はORF1の前にしかRBSが無いので、ORF1を翻訳してからじゃないとORF2は翻訳されない。 つまりPolar Effectがある。
有名な研究であるlac operonの例に軽く触れておく。 バクテリアのラクトースの消費についての制御の研究。
一つのoperonが以下の3つのタンパク質をエンコードしている。
これら3つはlactoseの代謝に必要だが、必要な時は3つ全部必要だし、不要な時はすべて不要なので、 一つのmRNAの制御でこの3つを同時に制御するのが合理的。
ほぼmonocistronic。数少ない例外は小さなタンパク質でregulationにしか使わないような物。
RBSは無いが、Kozak Sequenceと呼ばれる、リボソームが好む配列はあって、それはAUGの3nt アップストリームにGかAが、AUG直後にGがある配列。けれどKozak Sequenceが無いケースもたくさんあるので、これは好まれる傾向がある、程度の話。
RBSは無いが、代わりに5’末端の特別なmodificationがリボソームを動員する。5’ capと呼ばれる。
GTPが5’末端に特別な形で結合する。 どう特別か?
これらの修飾はRNAポリメラーゼのexit channelを出たところで行われるのだった。
5’ cappingはRNAを安定化させるし、Initiation Machineryが5’ capに結合することでInitiationが始まる。
バクテリアではRBSがリボソームがどこから翻訳を開始するかを教えるのに対し、Eukaryoteでは5’ capに結合したあとにそこからdownstreamをAUGが出てくるまでスキャンすることで翻訳開始位置を調べる。 あまりにも近すぎる例外的なケースを除いて、5’ capの一番近いAUGが開始コドンとなる。
保存されている要素は、アミノ酸を持ってきてタンパク質を合成していく、という基本的な機能に関わる部分に多い。 リボソームと結合したりリボソームにtRNAを渡すaccessory factorと相互作用したり。
異なる項目は、異なるアミノ酸を付加していく為に必要な区別となっている。
異なるアミノ酸を持ってくるのはaminoacyl-tRNA synthetaseという酵素の役割。(略称:aa-tRNA synthetase)
クローバーリーフの形は見やすいので良く使われるが、実際はL字型に折りたたまれた形状をしている(ノートの2ページ目参照)
そして二本の線が並んでいる範囲は、dsDNAに類似した2重螺旋を形成している。
また、anticodonの場所とアミノ酸が結合する場所が正反対に配置されていることにも注目。この両者は遠く離れている。
anticodonの側は(たぶんリボソームの)small subunitと言われるところと相互作用し、acceptor stemの方はlarge subunitと呼ばれるところと相互作用する。
つまりtRNAはリボソームのmRNAと相互作用する場所から、タンパク質を合成する場所をつなげているとも見れる。
コドンチャートを見ていると、最初の2つでアミノ酸が決まるケースがあったり、決まらなくても絞れたりするケースが多い。 tRNAはそれに対応してアミノ酸の数+α程度の種類で済ますことが出来る。
どういった仕組みか?
最初の2つのペアは通常のワトソン-クリック型のベースペア(Watson-Crick base pair)を形成するが、 3つ目はWobble Base Pairというよりゆるいペアリングをする。
anticodonがC, Aの時は通常のG, Uとペアリング。 Uの時はプリンと、Gの時はピリミジンと。 そしてanticodonはinosineのこともあり、inosineの場合はA/C/Uのすべてにマッチングする。
AとCを単独で認識出来るanticodonは無い。AとGを区別する必要があるのは、コドンチャートを眺めるとIsoleucineとTryptophanの2つのみ。 Isoleucineはinosineで3つとも識別すれば良い。 Tryptophanはもう一つがStop codonとなるので、tRNAとは別の仕組みで識別することになる。
InosineはTranscriptionの時のヌクレオチドには入ってない。どこからくるのか?
adenosine deaminasesと呼ばれる酵素群があり、これの仕業。 これがadenosineをinosineにする。
tRNAとmRNAに対してこのような作用をする酵素群が存在し、tRNAに対するdeaminaseはADATと、mRNAに対するdeaminaseをADARと呼ぶ(Adenosine DeAminase for “t”RNAと、Adenosine DeAminase for “m”RNAの略)。
Translationはコドンに対応したアミノ酸を付加することで行われるわけだが、これはどのような性質のSpecificityで実現されているかを調べる実験を幾つか見ていく。
CysをチャージしたtRNAがあるとする。 Cysは側鎖のCH2SHのSを取ることで、CH3のAlaに変化させることが容易にできる。 これを用いてTranslationに関わるSpecificityについて調べる。
すると、Cysのcodonに対してAlaが付加されてポリペプチドが形成されることが確認できる。
大きく違うアミノ酸の場合はリボソームの所で区別する仕組みがあることを後に見ていくが、 付加されているアミノ酸が少し変わる変更に関してはそのまま合成されてしまう。
ValをチャージするtRNAのアンチコドンはCAAでGUUにマッチングする。 このCAAをCUAに変異させるとGAUにマッチングするようになる。これはAspのコドン。
すると、Aspの入るべき所にValが入ってしまう。 つまりアンチコドンを変更すると対応するコドンが変わってそのまま合成されてしまう。
対応するコドンのtRNAにチャージされたアミノ酸はそのまま合成されてしまい、あるtRNAがどういうアンチコドンかとかどういうアミノ酸をチャージしているかとかはあまり気にせず合成されてしまう。
だからtRNAに正しいアンチコドンがあり、それに正しいアミノ酸がチャージされている事がタンパク質合成のfidelityを担保していると考えられる。
4つのドメインを持ち、二つの反応を触媒する。
アミノ酸とATPを化合して、AMPとの化合物とPPi(pyrophosphate)を生成する。
PPiは他の反応と同様pyrophosphataseが分解する。
これがペプチド結合のためのエネルギーをATPの加水分解のエネルギーと橋渡しする。
acceptor stemがnucleophilicなアタックでAMPを蹴り出してアミノ酸と結合する反応。 アミノ酸と結合しているtRNAはcharged tRNAと呼ばれる。
acceptor stemに結合するときにも、高エネルギーの結合はそのまま保持される。
なお、一つのbaseの他にdiscriminator baseなども識別に使われる。
aa-tRNA Synthetaseはアミノ酸の種類一つにつき一種類が存在する。 一つのアミノ酸に複数のtRNAが対応する場合があるが、その場合でもaa-tRNA Synthetaseは一種類で、 この一つで全ての対応するtRNAを面倒みる。
aa-tRNA Synthetaseが正しいアミノ酸をチャージしている事をどのように保証しているか?proofreadingの仕組みでこれを保証している。
aa-tRNA Synthetaseのproofreadingは似たアミノ酸同士を見分ける機能な事が多い。
例えばtyrosineとphenylalanineはOH基しか違いがない。 だからtyrosineのtyrosyl-tRNA synthetaseはphenylalanineかどうかを見分ける仕組みがある。
aa-tRNA Syntehtaseのproofreadingには二つの仕組みがある。
tyrosineはediting active siteでOH基とsteric clashが起こってediting active siteとマッチしない。 一方phenylalanineはマッチする。 このようにediting active siteは望まないアミノ酸を排除するためにマッチする。
さらにsynthesis active site(AMPを付加する所のActive Site)ではtyrosineとマッチングする。
このフィルタリング的なediting active siteと合成の実際のactive siteのspecificityの二段階で、正しいアミノ酸が反応する事を保証する。
リボソームは巨大なタンパク質で、E. coliの場合、2.5MDaくらいの規模でRNAポリメラーゼの5倍以上の大きさ。
リボソーム全体は70Sとも言われる。 SはSvedbergで遠心分離を発明した人。 沈殿でサイズを推定した時にSを単位として70Sだった。 bacterial ribosomeの上部だけだと50S、下部だけだと30S。 (足し合わせても70にはならない)
リボソームはRNAとタンパク質からなり、タンパク質は一般に小さく、10〜20 kDa程度のもの。 RNAは長いものもあり、23S rRNAがほぼ3k base、16S rRNAが1.5k baseほど。
リボソーム全体に占める割合としては、RNAとタンパク質は、ほぼ50% 50%。だからribonucleoproteinと呼ばれることも。
リボソームは二つのサブユニットから構成されて、Largeのサブユニットが50S、Smallのサブユニットが30S。
タンパク質はRNAを立体構造に保つのが主な役割で、触媒としての反応には関わっていない。 触媒の機能はrRNA(とtRNA)がになっている。
だからribozymeと呼ばれる事もある。
リボソームには3つのtRNAと結合する場所がある。 それぞれ以下のように名前がついている
mRNAはAとPの間の所で曲げられていて、どこがAに対応するコドン(3つのbase)かが分かりやすくなっている。
また、PとAのtRNAのacceptor側の終端はお互いに近接している。ここでペプチドの合成が行われる(上記ノート参照)。 この辺りがpeptidyl transferase centerと呼ばれ、こちらはlarge subunit内となる。(これが一つ目の重要な部分)
さらに、Eのacceptor endはこれら二つとはかなり離れた場所に配置されるので、間違って再結合してしまわないようになっている。
アンチコドンの側はdecoding centerと呼ばれ、small subunit側に存在する。(これが二つ目の部分)
リボソームはかなりconservedで、触媒の機能となる領域はほとんど同じ。 外側に違いがあるくらい。
追加されている項目は主にregulationやinitiation周辺の機能を提供する。