ここまでにも、DNAの複製を正しく行うための様々な機構を見てきた。
ここからはさらにもう一つの損傷とその修復の機構、DSBsとそのrepairを見ていく。 double-stranded DNA breaks (DSBs)。
DSBsの修復の機構には大きく以下の2つのカテゴリがある
以下ではNHEJについて見ていき、recombinational repairについてはRecombinationalRepairで見ていく。
修復の前に、まずはDSBsについて見ていく。 strandの両方に損傷が起こると、DSBsと呼ぶ模様。
DSBsの原因は以下のものが挙げられる。
UVなどで片方の損傷が起こるケースがそれぞれのstrandで十分近く起こって、そこでexcision repairの途中でexcisionが起こると、DSBsになってしまう場合がある。
また、片方のstrandにnickがある状態で複製が起こると、nickのある側はnickで止まり、そこの端がDSBとなってしまう。
片方にlesionがある状態での複製でも、違ったメカニズムでDSBになる事がある。 lesionがあるとそちらのstrandは複製が止まる。この時点ではnickがある訳では無いのでDSBにはならないが、 複製がしばらく経っても進まないと、フォークが巻き戻る。 すると複製されてる側のstrand同士が分離されてあまり、この2つがdsDNSを構成して余ってる片方をdegradeしていくとDBSとなる。
こちらのケースではdsDNAが途中で止まっているようなケースを指している模様。
Non-Homologous End Joining (NHEJ)のうち、良く理解されているclassicalな方についてまず見ていく。
Ku 70-80と呼ばれるタンパク質が、DSBを探してDNAを調べている。 Ku 70-80はヘテロダイマーで、片方が70 kDa、もう片方が80kDa。
Ku 70-80は二重らせんを囲む円形の形をしていて、DNA末端に結合する。
Kuが結合すると、DNA-PK (DNA-denpendent protein kinases)が動員される。
KuとDNA-PKが両端に結合されると、DNA-PKは次にArtemisと呼ばれるタンパク質を引き寄せる。
Artemisはendonucleaseとexonucleaseの両方の機能をもったタンパク質。
その後後述するDNA trimmingを行い、最後にDNA ligase IV complexが両端をつなげる。 DNA ligase IV complexはDNA ligase IVを含む大きなcomplex。
以上の流れをまとめると以下となる。
なお、あとの話を聞くとrepair polymeraseが伸張する事もあるっぽい(4と5の間か)。
X線やγ線が一方のstrandを壊すと、もう片方のstrandも壊れやすくなるので、やがてそちらも壊れる事が多く、DSBsが形成される。 この場合は全く同じ場所が壊れるとは限らず、ちょっと両者がずれている場合もある。
X線やγ線は問答無用で切るので、末端の化学的な状態は不定。 ポリメラーゼは3’末端にOHがある事を期待するし、 リガーゼは3’末端にOHが、5’末端にはPO4がある事を期待している。 だがこれらの前提は満たされないケースがあるという事。
これらの様々な事態に対応する為に、ArtemisはDNA trimmingの機能がある。 これが両端を期待する化学的状態に修正する。
正しく修復される場合もあるが、DSBsがどういうものかによって、結果はいくつかの場合がある。
という訳で、数個のbpについてのscarが出来てしまう場合がありうる。
これはどのくらい酷いのか、というのは、場所による。 重要なgene expressionの中では致命的な結果にもなりうるが、 一方で大多数の場所では2〜3個の塩基の削除や重複挿入は全く問題が無い。
だから全体的にはおおむね問題無く、安全な修復手順といえる。 どちらかといえばhigh fidelity。
クラシカルの他に、alternative/error-prone なNHEJがある事が分かってきている。
この修復はclassical pathwayがあまり活発でない細胞で起こるとか。
まず最初はPARP1が末端につく事で始まる。
PARP1がrepair proteinsを動員して、末端をととのえてつなげる、という事は変わらない。
ただclassicalと違うのはいつも同一の染色体同士をつなげるclassicalと違い、 別の染色体をつなげてしまう事が良くあるという事。 2つの末端を見つけ出してとにかくつなげてしまう。 Alternative NHEJは最終手段。
両者の切れ端同士のうち、ある程度の長さ(2〜10bp程度)がペアとして一致する所があると、そこを基準に修復をしていく。 このペアリングする領域をregion of microhomologyと呼ぶ。
microhomologyの両端を削って3’末端を伸張し、最後にDNA ligaseがつなげる。
Alternative NHEJはlow-fidelityで、chromosome loss/translocation が起こりうる。これらは壊滅的な被害を生む。 あくまで最終手段。
NHEJとRecombinational repairのどちらが行われるかは細胞の種類、生物の種族、細胞の状態など様々な条件で決まるが、 典型的な哺乳類ではSフェーズの一番活発に複製される時期ではrecombinational repairが良く行われ、それ意外の大多数ではNHEJが行われる。