【書籍】人口大逆転を読んでいて思った事がきっかけ。
実際に行うべき少子高齢化の対策について少し考えてみたい。
関連ブログ: 高齢化社会の現状の雑感 - なーんだ、ただの水たまりじゃないか
少子高齢化の対策を真面目に考えるにあたり、大前提としてそれ以外の話を最初に除外したい。少子化と少子高齢化の問題を混ぜてうやむやにするのを避けたい。
少子高齢化問題とは、2050年前後に急速に高齢者が増えて現役世代が減る問題の事 これはなぜ問題と思われるかというと、
急激な変化は痛みを伴う。例えば病院が急激に必要になっても増やすのが間に合わない、など。 だからこれは大きな問題になると予想されるし、理由も分かりやすい。
また、いつも子供が少なく高齢者が多い、という社会なら、不公平は無い。
けれどこれは事実では無い。少子高齢化は、2050年の周辺に急速に起こり、そして「急速に解決する」問題でもある。 だから1950年代生まれの人は経験しない負担を2000年代生まれの人が経験する事になるので不公平であるから、 何らかの再分配で緩和されるべきと思われる。
2024年現在、2050年に現役世代となる子供を生む事が出来るのは、せいぜい今後5年という所。 だから1世代となる。
そして今後5年以内に出産適齢期の人口というのは少ない。(統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐などを参照)
親が少ない世代の出生率というのを少し変えた所で影響は無い。出生率は比率なので、親の母数が大切だから。 また、今後5年という短い期間に少子高齢化を埋めるような非現実的な急激な大量の子供が生まれたら、 それは急激な変化となるので社会の対応が間に合わず、より大きな問題を生む事はすぐに理解出来る(保育園も小学校も明らかに足りない)。
だから2050年前後の話には今の子供を増やすというのは解決策にはなりえない。
2050年は関係なく子供が少ない、という問題をこの問題と混ぜるべきでは無い理由はいくつかある。
子供が少ない事を問題とする理由をいろいろ考える事は出来るが、そのどれもが2050年の問題を増大させる事はあっても減らす事は無いので、 子供が少ない事を問題と思っている人も問題と思っていない私のような人も、どちらも2050年前後の問題をまず解決すべき、という事には意見の一致は見られるはずだ。 3世代くらい掛けた解決策が2050年前後の問題を解決しないのはどちらの立場でも同意出来るはずなので。
少子高齢化というのは、未来の事では無くて団塊Jrが子供を産まなかった、という過去に原因がある問題であり、 原因を「悪い」とするのであれば、悪者が明確に団塊Jrになってしまう。 また、そもそも高齢者が一気に多くなる特殊な世代が問題であるのであれば団塊が「悪い」という事になってしまう。
選挙などでは、一部の有権者を「悪い」とする話は難しい。ましてや団塊と団塊Jrは多数派なので、多数派を悪いというのは難しい。
一方で子供が少ない、という問題は誰かを悪人にする必要が無いので、耳障りが良い。 現在の子育てがいかに大変かに理解を示す事には誰も敵に回す必要が無いので、選挙でも主張しやすい。 人口の多い人達にも耳障りが良い。
だから政治家などが少子高齢化の話を少子化にすり替えたがるのは簡単に理解出来る。
けれど本当に問題を解決しようと思うのなら、耳障りが良いが関係の無い話題へのすり替えに乗っかるべきでは無いだろう。
だから「政治家が言っているから」とか「みんなが言っているから」という理由で少子化を問題だという前提で話すべきではなく、 自分が何を問題として話しているかはちゃんと考えるべきに思う。 そしてちゃんと考えていれば、「少子化が問題である」という人なら、2050年周辺の「少子高齢化」がより緊急の対策が必要な大問題であるという事には異論は無いだろう。
ということでどちらの人も見解が一致してより大きな問題である、2050年前後の少子高齢化の問題にまずは集中しようではないか。
少子高齢化というのが原因が
の2つにある事を受け入れるのであれば、少子高齢化の対策とは少子高齢化を防ぐ事では無く(それは高齢者を早く減らす以外に防ぐ方法は無い)、 少子高齢化という現象が起きる事は所与としてなるべく問題を緩和することに主眼が置かれるべき。
今から行う少子高齢化の対策としては、
の2つが効果が大きいのでは無いか。
親を見ていると、70歳あたりから出来なくなる仕事が増えると思う。 一方で何も出来ない訳でも無い。 だが高齢者に限らず、それまでやっていた仕事と違う仕事をするのは困難が伴う。 だからこれまで働いていた仕事が70歳以上に困難な仕事の人は、70歳以降に働けなくなりがちに思う。 これを改善出来たら効果が大きいんじゃないか。
70歳以降でも出来る仕事に関して高齢者が新しく始められるように整備をして、補助金を出すのが良いんじゃないか。
それがどういう仕事かは分からないが。
一人前は働けなくても0.6人前くらい働く事を目指す、みたいに出来ないものか。
高齢者の労働は、高齢化で増える需要を満たすのが良いかもしれない。 老老介護的な。
比較的健康状態が高い高齢者が、比較的補助が必要な高齢者を助けるようなものは出来ないものか。
肉体労働は難しいので、監視業務に近い事とかはどうだろう。 基本はロボットがやるが遠隔でサポートする人、みたいな。 高齢者で完結させるのは難しくても、現役世代の補助で出来る事は無いだろうか。
高齢者の数が増えるので、高齢者が幸せだと幸せな人の数は増える。 また、高齢者は不便も多いだろうから改善の余地も大きい気もする。 だが先は短いので効果は短期的かもしれないが。
なんにせよ、政治的にも高齢者にとって良い政策はやりやすいので、現役世代に負担をかけずに出来る事はやった方がいいんじゃないか。
個人的に思うのは、身寄りのない高齢者が安心して暮らせるように整備するのは良い気がする。 子供の負担も減らせるし、子供の居ない高齢者の厚生も改善する。 子供を産む必要性は低下するかもしれないが、2050年前後に向けてはそこはデメリットは少なかろう。 少子化対策は(必要なら)2070年くらいから、3世代くらいかけてやる方が良い(出生率は複利で効くので一世代ではあまり意味が無い)。
例えば賃貸はもっと高齢者が借りやすいように積極的に国は介入する方がいいんじゃないか。 保証人とかのシステムも規制して、 高齢者を断るのを法的に禁止するとか。 こういうのは今からやっても十分間に合うのでやった方が良い気がする。
入院等でちょっとした手助けが必要な時に、 信頼出来て比較的安価な手伝いを頼めるようななにかを整備するのもいいんじゃないか。
これは一部を先の高齢者の労働に出来たら理想的では無いか、という気もする。
地域コミュニティの助けのようなものを、もっと現代的に法的、契約的に行うような。
医療に関しても、最初の相談窓口的なものを訓練をした適性のある非専門家に行わせるような事は出来ないものか。 医者では無いがそれなりに近く高い専門性を持ってる高齢者に、2年程度の教育を行ってなんらかの資格を与えるとか。
現時点でも今住んでる横須賀三浦地区の病院は混雑がひどく、いろいろ足りてないように見える。 医療をどうにかするのは必要な事に見えるが、 医者は今からは増やせないだろうから医者以外に作業を移行するよう頑張るしか無いのではないか。
医者でないゆえの間違いは増えるだろうが、医者にかかれず適当に判断しがちな現状よりはマシなのでは無いかなぁ。