オーディオブックで聴き放題になったので聴き始め。
まだ最初の方だがなかなか面白い。 オーディオブックでも十分楽しめる内容かな。
サピエンスがほかを虐殺したって話はゲノムからすると否定されると思うのだが、 少数だけ混ざってたと考えて本筋を変えないのはおかしい気がする。 少数の人にだけネアンデルタール人のゲノムが混ざっているなら分かるが、その地域に多くの人に見られるのだから。
どの地域でも似たような事が起こっている事から考えても、混血に男女ともに生き残るような何かがあったと考えるべきだろう。 現代との類推で考えるなら、混血がめちゃモテたんじゃないかね。
サバイバルという漫画の印象で狩猟採集生活はずっと食料を求めていないと生きていけないという印象があったが、 本書では労働時間は短く豊かだったと言っている。 ではなんで人口がそんな増えなかったのか?とかが気になる所だが、 そういう話はなさそう。農業の方で出てくるのかな?
全体的に、学者がこう言っている、という話は多いが、学者がどうしてそういう結論を出したのか、という根拠が無いので、信ぴょう性が自分で判断出来ない。 なぜカロリーをとりすぎるのかは【書籍】科学者たちが語る食欲では食物繊維が昔は多く含まれていたが現代では含まれていない事からくるバグのようなものという扱いだったが、 この本では高カロリーなものは貴重だったので見かけたら食べるという風になっていると言っていて、 それ以外の説はあまり同意が無いと言っている。 こういう、他の学者が言っている事で知っている事があると、それを相対化する材料が無いので信じるか信じないかの二択になってしまってイマイチだなぁ、と思う。
もうちょっとどうしてそういう結論になったのかの考古学的な証拠とかの話があってもいいんじゃ無いかなぁ。
そして良く分かってない事について断定的に話しすぎる気もする。もうちょっと確度に合わせて言葉の強さを変えてほしい気がするんだが。 先史時代の事はどうしても大して多くはわからない、と言っておきながら色々な事を断定的に語るのは、納得がいかない。 わからない事をわからないと言うのは歴史の話では大切だと思うのに、タイトルに全史をうたっておきながらわからないことをフィクションっぽく語ってしまうのは不適切な気はした。
あと学術的な専門用語を比喩表現で使って未定義な感じで話をするのもややこしいと思った。 例えば遺伝子のような学術用語を比喩で使うのは、それ自体は良くある事だけれど、遺伝子の話をしているすぐあとで比喩で使っていてしかもどういう意味で使っているか曖昧だったりして混乱しやすい。 特に自分は生物で遺伝子や表現型などについてかなり専門的に学んで正しく使う訓練をしたので、こういう雑な使い方をされると本当に何を言いたいのかわからない。 宗教とかも比喩で使ったり宗教の話をしたりが混ざり合って、比喩で使っている宗教が何をさしているのか良くわからなかったりする。 なんかいろんな言葉を未定義なまま使うので結局なんの話をしているのか良くわからんのだよなぁ。
ただその割には普通に聞いていてそれなりに面白さがあるので、オーディオブックとして暇つぶしには悪くないんだよな。 なんかその辺は不思議な感じはするね。 多分昔のサピエンスについての話は本当でも本当でなくても、まぁどっちでもいいか、と思える程度にしか関心がないので、 信ぴょう性が低かったり根拠が良くわからなくても、読み物としてそういうものとして読めるのかもしれない。 週刊誌の記事とかで全然知らないどっかの村の事情とかの話を読むのに似ている気がする。 なんか読み物として面白く出来ているんだよな。
農業社会はひどいものでどうしてそういう酷いものに移行してしまったのか、みたいな話をしているが、全く説得力を感じない。 個々の活動は改善を目指したが全体としてはひどくなってしまった、という事は割と見られる現象なのでそうだというならそれ自体はおかしいとも思わないのだが、 当時の人が全体としてそれを望んでいないというのは信じがたい気がする。 どちらかといえばより良い均衡があってもそれを見えずに局所最適に陥っているとかそういう方が納得出来る。
この前の話もそうなんだが、なんか著者の謎の善悪基準みたいなのがあって、それを元に悪とか罪とか言うのを強調したがり、 その結果、実態の話の説明が疎かになる傾向が強い気がする。 7万年前の人類の行動が悪か善かには大して関心も無いしそれを議論する意味も無いと思う自分にとっては、 その善悪の話を延々と続けるのは無駄に思える。 それよりもどういう証拠がわかっていてどういう事はわかっていなかをもっと詳しく話してほしい。
現代社会との比較もなんかあんまり説得力を感じないよなぁ。 労働時間などで狩猟採集民との比較をしたりするのだが、同じ時間で同じ事をしている訳じゃないのでそれを比較しても何もいえないだろう、という気がしてしまう。 なんか無理にどちらが上かを頑張って順位づけせずに、どういう暮らしだったか、どこが今と違うかを丁寧に記述していけばいいんじゃないかなぁ、と思ってしまう。 読み物としてこういうものの方がウケるのかねぇ。
ただ、多様な種が絶滅したというのはなかなか大きな出来事なんだろうな、とは思う。 なんか人類は大きなものを狩るのが凄い上手くて、大きなものは生きていけない時代になったんだろうな。 そしてその代わりに人とともに生きるのに向いたものが増えていくのは、それ自体は善悪はよくわからない気がする。
農業が色々な場所で割と近い時期に起きたのも、あまり十分な説明が無いが不思議な事だよなぁ。 寒冷期が終わって温暖な時期になったというのが一番大きな理由だと思うし、 その辺のことは、【書籍】人類と気候の10万年史で割と詳細に議論されていたが、 その前の温暖な時期には起こらなかったのは何故なのか。 認知革命というのが必要だったのかね。その辺の話をもうちょっと掘り下げてほしいよなぁ。 それがどういうものでどういう証拠からそういう事を考えているのか、とか。 そこは本書のテーマの中で最重要なポイントなんじゃないか。
農業革命がいかに大きな影響を与えたのか、という事を考古学的な事から深掘りしていって王国とかの話につながるのか、と期待していたら、 何故か延々と黒人差別の話をしだして、それが終わったら今度は男女差別の話をしだした。 しかも農業開始時じゃなくて、独立以後のアメリカの話。なんで? 話の流れ的には官僚制というのがいかに大きな変化を産んだかという話が続くはずだったと思うんだが。
男女差別の話も、生物学的な性差では説明できないような文化的な違いが多くあり、その多くが男性に優位だ、 という話なのだが、その男性に優位な違いができていくメカニズムとかを語るのでは無くて、 生物学的な違いでは説明できないから差別だ、みたいな事を延々と強調しているのが何をやりたいのか良く分からない。
話の流れとしては、農耕というのは協力する人間の数が爆発的に増えて、その結果階層が出来ていくのだが、 その階層の起源は小さな違いによる偏りが自己強化的に拡大していって固定化していった、みたいな話なんだと思うんだよな。 でもそういった階層化がどうして必要になるのかとか発展していったメカニズムとかいう話を全然せずに、 延々と黒人差別の話をしてカースト制度と同じだ!と繰り返しているの、やっぱりおかしい気がする。 この本はサピエンスの全史の話で今は農耕を始めた頃の話をしているんじゃないのか? ちょっと脱線するくらいはいいけれど、大半は農耕を始めた頃の話をしてくれよ。 農耕を開始した時期にどのような差別があったのか、という話をするなら理解出来るしそういう話は聞いてみたい所だが。
農耕に移行するのは大事件でめちゃくちゃ多くの変化があったはずなのに、なんでこんなに近現代のアメリカの差別の話ばかりしているのだろう。 グレコローマン以前の農耕社会にどのような風習が見られるようになったのか、という話をしてくれよなぁ。 というか話の流れ的にそういう話じゃないとおかしいと思うんだが。
この本、聴く前は結構褒めている人が周りに居て、壮大な人類史的な事を言っていたので期待して聴き始めたのだが、 どうしてこの本を読んでそんなに面白いと思ったのか、ここまでの所まったく理解できない。 最後がめっちゃいい終わり方してなんかいい本だった、って気分が読んだ後に残るんだろうか。
さすがにこれを続けられるとうんざりなので、農業革命の次まで聞いても同じ感じだったら聴くのをやめよう…
少し時間が空いたが、上の最後まで聞いた。 帝国の話は「帝国は悪と言いたいがなかなかそうは言えない」みたいな事をグダグダ言うだけで、 いろいろな帝国の名前を出しはしてもその中身の話をほとんどしない。 そもそも悪かどうかとか興味無いというかそういうものでは無いと思っている自分からすると、 なんでこんな話を延々としているんだ?という印象しか無い。
他の所もそうなんだけど、本題の話をしないんだよな。 帝国について知られているいろいろな事を教えてくれるのを期待しているのに、 なんか著者の謎の思い込みの「普通の人の思う価値観」的なものを否定し続けるだけで、 史実として分かっている事とかそういう情報がすごく少ない。
漢とローマとモンゴル帝国とかの話をするなら、共通点でも違う所でももっといろんな事が言えると思うんだが、 なんかそういう話が無いんだよなぁ。
けれど、さすがにずっと現代のアメリカの人種差別の話とかを続けるよりは、帝国についての思い込みの話をしている分、 聞くに耐えない内容では無かった。 聞く意義は感じないが。
あまり内容には期待は出来ないが、上巻を最後まで聞いたので酷くなければ下巻もざっと聞こうかな、という気持ちにはなっている。
相変わらず各宗教の話よりも、「みんな一神教の方が凄いと思ってるけどそうでも無いんだよ」みたいな、 そのみんなって誰やねんという思い込みの話が多く、あんまり中身は無い。 けれど宗教は仏教の話とナチスの話はそれなりに各論の話があって、 特にナチスは知らない事も多くて興味深かった。
上は酷かったが、下は上よりはマシな気がする。
帝国と宗教という話が出てきたのだからハカーマニシュ朝とゾロアスター教という話が出てきて帝国と宗教の関係について話すのかと思ったが、 そういう話は全然出てこない。 帝国と宗教の話を単にするだけで、両者の関係みたいなものや、多民族をおさめるのに宗教の果たす役割とかそういうのが無いのが、 なんかタイトルからすると意外に思う。
話的にはもっとマニ教とは何かとかその説明が多ければもっと面白かったと思うのだけれど。
伊豆からの帰りの車で砂糖の世界史を聞き終わったのでこれを聞いていた。
相変わらず西洋中心の狭い世界観で物を語るのは気になるが、 「近代欧米の」帝国主義と思って聞けば、帝国主義の章は面白く聞けた。 序盤の内容の酷さに比べると、ここらへんは普通の内容に思う。
全体的に、下は凡庸ではあるけれど聞ける内容だよな。 皆の感想がそんなに酷いものじゃないのも、読み終わった時に下巻の印象が強かったからじゃないか、という気がする。
一方で下巻の内容はそんなに驚きも新規性も無いので、あまり読む価値を感じないという部分もある。 普通に興亡の世界史とか読む方が面白いし内容もしっかりしているんじゃないか。
ただそういうのを読んでちゃんと考えるのは大変なので、もうちょっと娯楽として軽くこのくらいでいいんだよ、 って人は居るかもしれない。自分は歴史が好きなのでちょっとそうは思えないだけかも。
資本主義は半分くらいは酷い内容で、なんかいろいろ思わせぶりな事を言いつつ自分が何を言いたいのかは明確には話さないで陰謀を知っている的な風を装うという感じだった(貨幣創造の話とか紙幣を刷るとか現在がバブルだと言いつつどこの事を指しているかは明示しないなど)。 残り半分は割と普通の内容。
そのあとに幸福の話が来て、これが最後なので聞こうかと思っていたが、あまりにも聞くに耐えないので、ここで聞くのをやめる事に。 もう歴史の話は無いだろうし、このあとに聞くに値する内容も無いだろう。
全体としては酷い本だった。 サピエンス全史といいつつ本の7割は歴史の話をしない。 そして残りの三割も近代からそれ以降の西欧の話の比率が極めて高く、 著者はあんまり歴史を勉強してないんだな…という印象だ。 これを褒めていた友人たちの教養を疑う内容だった。
主義主張が自分の好みに合わないのはいいとして、せめて歴史の話してよ…
ただ下巻は上巻よりはだいぶマシになる。 近代ヨーロッパの話などをちゃんとするので、少なくとも歴史の話ではあるし、 世界史的な話をしようという姿勢は見える。
でも終盤まで聞いた結論としては、もっと早く聴くのをやめるべきだったな、というもの。 興亡の世界史とか読んでいる方がずっと勉強になるし、人類の歴史全体についてもずっと多くを学べる。