オーディオブックで聴いている。
この本の著者である伊藤元重先生は新聞とかでたまに連載している時に読んでいたが、バランスが取れていながら経済学的に当然ちゃんとしていて、 日本人経済学者の中で一般向けに何かを語るのに一番向いている人なんじゃないか、と思っている。
この本自体は勉強の仕方的な話で経済学の本では無い。 何かハウツーを語っているというよりはエッセイみたいなもので、 これまでに自分が試した方法とその感想みたいなの、及びそれにまつわるエピソードなどがメイン。 以前はこうしてて、こんな問題があったがまぁいいか、と思っていて、そこでiPadが登場してGood Notesが良い!みたいな、そういう話。 GTDとか、なんか妙にTech系というか、イマドキなものを使っていて面白い。
しかもエピソードがいちいち一流の経済学者の日常、的な感じで面白い。 政府の審議会的な事でどんな感じの日常になるか、とか、学部長の頃は〜とか、 学会でちょっと出会って話した経済学者とかが皆も知っているような有名人だったりとか(本人も有名人なのだからそう不思議でも無いんだろうが)、 その人がやっているのはこういう手法で自分も試した所XXとか、 ちょっと普通の人には書けない日常だ。
若い頃の話もなかなかいい。さらりと「若い頃は国際学会に論文を通さないといけないので〜」とか言うあたりも、 ちゃんと通してきた実績を感じて良いね。そうそう、やっぱ本業がちゃんとしてない人の言う事には説得力を感じないよな。
教養のある大人という感じのエッセイで、自分も教養ある大人にならんとなぁ、という気分になる。
コラムとか講演とかをどんな感じにやっていて、意外とこの手のアウトプットがインプットになっている、みたいな話は、へーっと思った。 だいたい特定のトピックについて書くのでそのトピックについての良い整理になる事、 それについて書くとそれに関連する事が次に続いていくので、自分の考えをまとめる良い機会となるとか。
自分はプログラムばかり書いているとインプットが少なくなりがちとかは良く思う事で、 インプットとアウトプットのバランスも良く考える。
締め切りがあって読み手がいるというのが大切みたいなのは分からんでも無い。 そういうの、自分は最近やってないが、雑誌の記事とか書くと意外と良いインプットにもなったりするのかなぁ。
講演や講義などは台本を読むのはつまらなくなるので、やっぱりその場の自分の言葉で聴衆の反応とか見ながらやる方が良い、 みたいなのは、当たり前のような事だけれど、実際にそうやってるというのがなるほどなぁ、という気になった。 初めて受け持った授業が英語でさぁ〜みたいなのは出来る若手の思い出話っぽくていいね。
最後まで聴き終わった。とても良かった。 東大とかロチェスター大で出会った人たちの話とか、非常に刺激を感じるいい話だ。
全体的に、これを聴いたからといって具体的に何か今日からやる事が変わるという感じの本では無いのだが、 知的な生産活動という事について考えたり、教養のある大人について考えたりした。 こういうのがオーディオブック向きに思う。
とてもおすすめ。