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【書籍】財政赤字の神話

Contents:
  1. 読み始めたきっかけ
  2. 読み終わっての全体的な感想 2021-12-19
    1. この本を読んだあとに自分が感じた論点
    2. 社会保障費の国庫負担をすべて財政赤字で賄うとどうなるのか?
    3. 就業保証はさすがにザル過ぎでは無いか
    4. まとめ:MMTの本はこれだけで良いかな
  3. 以下読んでいる時のメモ
    1. 日本版序文からいまいち
    2. 明らかと賛同する事、本当が分らない事
    3. 就業保証
    4. 財政出動をインフレリスクで評価するのは良さそう
  4. クラウディングアウトの話は良く分らない
    1. そのあとに金利の話があった
    2. 給付の話

経済

読み始めたきっかけ

MastodonでMMTに言及してる人が居て、名前だけは良く聞くがMMT知らんな、と思った。

そんなに真面目に知る必要も無いか、と軽くググったが、取り巻きの信者みたいなのがあまりにも酷くて、日本であまりちゃんとした人で話している人が居ないっぽい? 松尾さんは割とまともだが、そもそもMMTの信奉者じゃないという…

まともな人は批判ばかりで、それを信者が理解出来てないというばかりで、全然実態が分らないので本家の人の本を読むしか無いなぁ、と思った所、Mastodonの人はこの本を読んだ、と言ってたので読んで見る事にする。

読み終わっての全体的な感想 2021-12-19

全体的に、経済学の基礎的な知識がある人にとってはあまり良く書かれた本では無いと思う。 例えば財政赤字が増えていくとやがてインフレに結びつくと思っているから財政赤字は良くない、 と思っているのが普通の考えだと思うが、「財政赤字は問題では無い!なのにAもBもCも(以下数十ページ既存の人が財政赤字を問題だと言っている引用が続く)と言っている!でもこうやって考えれば財政赤字に問題が無い事がわかる!」と言ったあとに、 「本当の問題はインフレだ!」とずっとあとになって続けたりする。 いやいや、そりゃインフレしないという前提なら財政赤字に問題無いだろう。

こういう風に、普通は関連していると考える事に関して独立していると暗黙のうちに仮定してその根拠は対して示さず、独立している片方を問題無いと長々と話す。でも結局あとで関連していると普通は思われている方は問題だと言う。 本来はその2つが独立だと思う根拠の所を長々と語るべきだと思うのに、独立だと仮定したら自明な事を延々と語って全く新しい事のように言うのは、読んでいて単にミスリーディングなだけに思う。

しかもその延々と続く自明な話が、繰り返しがとにかく多い。一回言えばわかるよ…
という事で後半は「これまでの考え方は間違っていた!」系の延々と続く引用は読み飛ばした。たぶん終盤は8割くらい読み飛ばした事になったんじゃないか。 うっかり読み飛ばした中に重要な主張が混じっている可能性はあるが、もうそれは諦めるしか無い。全部読んでられない…

一方で、同じようなミスリードを財務省などが使っているのも確かで、それに対抗する為のプロパガンダであるとすると仕方ない部分もある。実際そういう本だったのだろうな。

そういう訳で書かれ方はいまいちと思ったけれど、MMTの主張というのがどういうものかはwebの記事とか読むよりは分かったし、 いくつかの主流派経済学や現状の政策への批判は見るべき所もあるように思った。 自分的に重要と思う部分だけを少し取り上げてみる。

この本を読んだあとに自分が感じた論点

主張の仕方が無駄に分かりにくいけれど、考えてみるべき指摘はあると思ったのでその辺についてまとめてみたい。

  • 日本(のような国)において、インフレが起こる財政赤字の水準は想定よりもずっと大きい可能性
  • 日本(のような国)において、インフレの被害が想定よりも小さい可能性
  • 現状の分配の公平性をもっと大きく改善しても、効率性がそれほど犠牲にならない所にいる可能性

この辺の水準に関しては確かな事は分かっていないので、実際そうである可能性は考えられる。 そして実際にこの水準について皆の考えが大きく実際とずれているなら、パレート改善出来るという事でもある。

一方で、既存の認識が正しくてこれらの可能性を誤ってあると判断した場合のリスクについても、 ちゃんと議論されるべきに思う。 例えば累積債務がすごく大きな水準になったあとにインフレの被害が思ってたよりもずっと大きくて、 国民の多くが餓死をするかインフレを受け入れるかの二択を迫られるようなケースにもなりえる訳で。

社会保障費の国庫負担をすべて財政赤字で賄うとどうなるのか?

日本という点で行けばMMTが一番関係するのは、社会保障費の国庫負担分の解釈という事になると思う。 社会保障費の国庫負担をすべて財政赤字で賄っても問題無いのか? これはインフレの被害と関連しているので独立では議論出来ない所だが、それ以外にも分配の論点はある。

完全雇用の生産量が例えば500として、年金に100を支給すれば、少なくとも1/5は働いていない高齢者が取る事になる。 200を支給すれば2/5、300を支給すれば3/5を高齢者が消費出来る事になる。 当然それ以外の世代は最大でも残りを消費するにとどまる(貿易を考えない場合)。

自分の感覚としては働いて生産している人の方が生産したものは多く消費出来るべきと思う。 65歳以降の人口比率が40%くらいとして、4割を持って行くのはやはり納得出来ないのでは無いか。

そうすると70歳くらいまではやはり普通に働いてもらうなどの比率自体を変える必要もあるだろうし、 取り分もせいぜい2割と3割の間くらいになるように社会保障費は払われるべきじゃないか。 そうすると国庫負担はせいぜい100兆円くらいが上限となる。

自分は50兆円くらいに収めるのが上限と思っていたので、政策論議としては15兆円〜100兆円の間くらいで議論する事になるのでは無いか。 なお、現状は自分が最後に見た時は30兆円くらいだった。

実際にはインフレが起こるか、その被害などはある程度分からない状態で話をする必要があるので、 どこまでそのリスクを社会が負うべきか、という事も含めた話になる。 これは話し合うに値する論点と範囲と思う。

就業保証はさすがにザル過ぎでは無いか

就業保証というのはMMTでよく主張される事なのでどんなもんか、と思って最後まで読んだが…

資源の効率的な配分というのが競争の主なメリットであり、 失業はその結果のある程度の必然となっている。 それを無くそうとすれば、当然非効率な分配が起こりうる。 非効率な分配が起こるのは必然としても、それをどれだけ被害少なく済ますか、 という所に政府雇用の良し悪しが出ると思うのだが…

割と重要な、どうやって不要でない仕事だけで雇用を埋めるか、という部分が 「国ではなくコミュニティが決めるケアワーク」というだけというのはさすがに何も考えてないに等しいのでは無いか。 コミュニティが無駄な仕事を延々と生み出すなんてよくある話だし、 それを防ぐメカニズムが何も無いというのは…

日々テック系の大企業などが非効率に陥ってしまうのを頑張ってなんとかしようとしているのを考えれば、 これではさすがに全然ダメと思った。 これなら失業給付を拡充する方がよっぽどマシと思った。

まとめ:MMTの本はこれだけで良いかな

という事でこの本は書かれ方はいまいちと思ったが、もっとよく書かれている本を読みたい、という気も起こらなかったし、 主張の主な部分は理解出来たように思うので、もうMMTについてこれ以上学ぶ必要は無いかな、と思った。 また、一般人がMMTについて理解する必要もあまり無いように思う。

日本はギリシャのようにはならないし、財政赤字を家計に例えるのはあまり良いアイデアでは無いし、 財政赤字の問題は最終的にはインフレに帰着される、という事だけ常識としておけば大多数の一般人には十分ではないか。

自分はMMTの主張を「「そんな事をすればハイパーインフレになって経済がむちゃくちゃになってしまう」で話を終わらせてしまわずに、 もっと真面目にインフレに関してのリスクを議論すべきでは無いか」という物と受け取った。 これは割と正しい指摘と思う。 実際日本ではインフレは起きていない、というのはもっと重く受け止めるべきかもしれない。 USでは最近起きてるっぽいが。

以下読んでいる時のメモ

上記のようにあとで説明が出てくる事で全体としての主張がようやく分かるという本の書き方の都合上、 読んでる途中で感じた感想は本全体の感想としては適切でない物もある。 ただ全部書き直す気も起こらないし、こうした誤解を招くような書き方ではあったのもこの本自体の欠点を表していると思うので、 このまま残しておく。

自分の最終的なこの本の評価は、以下ではなく上に書いたものと思って欲しい。

日本版序文からいまいち

なんか開幕からいまいちで読む気がなくなりつつあるが。

「インフレがなければ通貨主権のある国はいくら財政赤字を重ねてもデフォルトしない」は、良くリフレの議論で言われたいわゆるバーナンキの背理法、「もし貨幣をいくら発行してもインフレが起きないなら、貨幣の発行で全ての政府支出をまかなえるので無税国家が実現出来る(そんな事は無いから必ずインフレは起こせる)」と同じ事で、別に何も新しい事では無い。

財政赤字を家計に例えるのが良くないのも別に新しい話では無い。 こうした散々既に言われている事を全部無視して「これまで言われてた事は全部間違いまったのだ!」というのは、読者がバカだと思っているようにしか見えない。

問題はインフレが(そして長期金利も)制御出来るのか、という所だろうに。そこを好きに制御出来るとすれば、そりゃインフレが起きるまでは拡張的な財政政策が取れるのは当たり前だ。そしてそれが正しい可能性は当然ある(それは単なる財政ハト派だ)。 それを主張するには「ひとたびインフレが起きたら、それを沈静化させる為にはインフレを起こさないよりも長い間の引き締めが必要になる」という事に反論しなきゃいけないと思うのだが。

そして生産に着目せずにコロナ禍の政策を語るのも全く説得力は感じない。 結果として同じ結論になる可能性は十分にあるので政策提言自体はいいとして、そのロジックが雑過ぎて全然説得力が無いだろう…

正直「現在インフレの予兆がまったく無いのだからもっと財政拡大の余地はある、インフレが始まったら引き締めれば十分間に合う」といつたけなら、別段新しい理論は必要無い。新しい理論を作ってもいいが、結果が同じならその政策だけに協力した方が有益なんじゃないか。

明らかと賛同する事、本当が分らない事

この本は、幾つか一般に思われる事とは違うことを仮定した上で、その仮定を受け入れれば自明となるが良く言われる主張とは異なる結論を延々と挙げて解説していく、という形態を取る。 重要なのは一般的じゃない仮定の妥当性であり、そこを受け入れたら自明となる事はそんなに重要では無いと思うが、それが分かりにくいので、ここに気付いた物を書いておく。

普通に正しい事

  • 政府の債務を家計に例えるべきでは無い(少なくとも比喩にまつわる正しくない部分はある)
  • 通貨主権のある政府は破産(デフォルト)しない
  • インフレが制約条件である事
  • 自然失業率を予想するのが難しい事
  • 中国が米国債を買うのは貿易黒字の裏返しに過ぎない

仮定を受け入れれば正しい事

  • 財政赤字は問題では無く、政府の支出を政府はいつでも通貨発行で賄う事が出来る

正しいか分らない所

  • 税金を払う為に貨幣は価値を持つ事
  • 財政赤字が緑のドルの供給を増やす(財政赤字は国債発行で賄ってるのだから増えるのはイエローバックたげで、グリーンバックは増えない、グリーンバックが増えるかは中央銀行の政策次第では?)
  • 2019年の軍事費がFRBから直接追加で発行されたドルで支払われたか(ほんと?信じがたいんだけど)
  • 「経済学者が低インフレを懸念するのは、インフレ率が低い、あるいはまったくない場合、通常は経済全体の弱さを表しているとみなされるためだ。」あんま聞かない主張だが。フィリップス曲線的な関係で失業率が高い事の裏返しと言えなくも無いが。普通デフレが問題になるのは賃金などの下方硬直性から分配にゆがみが出るからじゃないかね。他には靴底コストとかメニューコストとか。
  • 「FRBは経済に直接資金を注入する事はできない。〜それは財政の権限を担う議会の役割だ」 議会も直接資金を注入する事は出来ないのでは?財政政策は税金か赤字国債で得た金で行ってると思うが。議会の赤字国債の発行+中央銀行の買取の両方をあわせて初めて直接資金を投入出来るんじゃないかね(いわゆるヘリコプタードロップ)

リストが長くなりすぎて編集が大変になってきたので、長いのは独立したブロックに変更。

「低失業率とインフレの間には一切関係がないことが明らかであるにもかかわらず、」これは驚きの主張だが根拠は良く分らない。 NAIRUの推計を誤っていたのはそうだろうが、インフレ率が2%を下回っていた、というのは、多くのだいたい2%付近の時期は目標を達成していた、というのが多数派の見解だったのでは。

「(NAIRU推計の)この誤解が原因で、FRBは金利を引き上げる事によって失業率の一段の低下を防ごうとしてきた」金利を上げたがったのはそれだけじゃなく、正常な金利に戻したかったからじゃないか。それが必要な時の引き下げ余地も生むという話だった気がする。

なんか怪しいと思う事が増えすぎてメモしてくのは無理になってきたなぁ。

失業率は一定より低ければ大きな問題とは思ってない人は多いと思う。摩擦的失業とか、ある程度の労働力の分配の効率の為には少しの失業は必要という考えで、それは国民に犠牲を強いてるというのは説明が要るんじゃないか。

「政府は資金が必要だから国債を発行している訳では無い。国債を発行するのは準備預金を保有する人々がそれを米国債に転換できるようにするためだ」 これも政府は中央銀行とは違うのだから正しくなくて、資金のために国債を発行しているのでは。中央銀行なんて無くす、または政府ともっと一体化して言っている事を実現するように変える事は出来るが、今はそうなってない(し、そうなってないのには理由がある)。

なんかここに限らず、中央銀行と政府を一緒に見て、さらに短期債務と現金を同じに見ようという傾向があるよなぁ。 そういう政府を作ってそういう見方をする事は出来ると思うが、それは現状とは違うんだから何を想定しているのか、そしてその形態への移行の実現可能性と必要性をちゃんと議論して欲しいよなぁ。 理論的には中央銀行を独立させない事は出来るけれど、実際それが可能なのか、その時にリスクがどのくらいかは考えるべき事だろうに。ヘリマネとかの議論だって現在の枠組みで等価となる操作をちゃんと考えて議論してたのに、この本はそういうのをさぼりすぎじゃないか。 だから財政赤字とか政府支出とか言う言葉だけで議論すると既存の理論とコミュニケーションに齟齬が出るのだと思うが。

国債の日銀直接引き受けは議論されていて多くの反対派も居る事なのに、まるでそれが日々行われている事のように語るのは良くないと思う(それを当然すべき、と主張するのはいいし、実際そう思ってると思うが、それは明示すべきだろう)。

就業保証

就業保証が良いかどうかってMonetary Theoryとの関係は薄い気もするが。 ただどこでFinanceするかという所で関連はあるんだろうが。

必要な量の仕事をいつも用意するのはかなり難しいと思うんだがその辺はどう考えているんだろうね。どんな職場だって新しい人を入れるのは結構大変なのに、そんなのを柔軟に出し入れするって。

あと景気が回復した時に政府雇用が減るメカニズムが良く分らないな。 景気循環の意味で不況が来る都度政府雇用が増えて、不況が去ってもそのまま政府雇用の水準が変わらず、だんだん膨らんでいく、みたいな事はいかにも起こりそうと思うし、それは社会主義と同じ問題が発生すると思うのだが。 不景気な時だけ雇用されて景気が回復したら減るメカニズムが要るよなぁ。

これって、少しの失業は必要ってのと同じ話な気がする。労働力の効率的な分配の為には少しの失業が必要で、それを無くすと労働資源の分配が非効率になり社会主義と同じ要らないものを生産しすぎてしまう問題が発生すると思うんだが、その辺についての考察が無いんだよなぁ。

あと政府雇用の仕事から一般の仕事に移行出来る事を前提としているが、それは同じ業界じゃないと難しいんじゃないかね。 まさに良くある雇用のミスマッチという奴じゃないか。

財政出動をインフレリスクで評価するのは良さそう

この本では、

  1. 就業保証による政府雇用の度合いでインフレリスクを測る
  2. 財政の健全性は財政赤字の額では無くインフレリスクであるべきで、この観点で評価すべき
  3. インフレリスクが高い時の財政出動は、インフレを抑える課税(増税)とセットであるべき

という主張に見える。 このうち、1と3は置いといて、2は出来るならこちらの方が良い気はする。 もちろん1が無いとインフレリスクを測るのが難しく、3が無いとインフレリスクがある時に必要な出費がある時にどうすべきかが分らない訳だが、他の手段でなんとか出来るなら2は望ましいんじゃないか。

1は例えば失業率や公定歩合、足元のインフレ率などで代替出来るかもしれない。 3も金利の引き上げなどの手段と組み合わせられるかもしれない(が、累積債務が大きい時に金利を引き上げるとインフレが加速しうる気もする?)。

一方で、インフレがひとたび始まるとそれを鎮めるためにはインフレを避けるよりもずっと長く厳しい緊縮が必要になるなら、インフレリスクの判断は先回りしたものにしなきゃ駄目で、結局現状と大差無いという結論になりそう。

このインフレが実際に起きた時の被害の大きさがたぶん議論すべき事に思うが、そればMMT関係なく以前からそうだよな…

クラウディングアウトの話は良く分らない

なんか貯蓄と投資の話をする時に生産を決めないでやるから、何を言いたいのか意味が分らないな(四章)。

政府の赤字が民間の黒字になる、という話を繰り返すだけで、生産のうちどれだけ消費に使われてどれが投資になるかがこの話では最後まで出てこない。

生産が100万円として、政府が50万円分その生産した財を使えば、残るのは当然50万円分の財で、それを消費にするにせよ投資するにせよ50万円分の財が無くなってるのは当たり前と思うのだが。

生産が完全雇用じゃなくて政府の支出で雇用が増える(生産が増える)ケースなら当然クラウディングアウトは起こらないし、それは財政赤字が民間の黒字になってるかどうかは関係ない。そこの前提を決めないと何を言いたいのか分らないのは当然だと思うのだが…

結局税金とか金利とかも含めて、モデルとして閉じた形で議論しないとこういう話はまったく意味が無いと思うんだが、何をやりたいのかなぁ。

生産を全て政府が買い上げて穴ほって埋めたら当然民間は生活必需品などを得るためにはどうにかはしないと行けない訳で、それは猛烈なインフレと円安で調整される以外にはあり得ないし、その時生産は全て取り上げられているんだから企業投資がなくなるのも明らかだが、インフレとか入れずに民間の黒字とか赤字だけを議論するとそういう調整の余地が無い。

そのあとに金利の話があった

モデルとして閉じてないので何も言えないじゃん、と思ったら、そのあとに金利の話があった。これはやっぱ考え方としておかしいよなぁ。 閉じてないと結論は出ない事について、部分だけ取り出して従来の考えは間違ってると主張している。

完全雇用での生産がまずあって、しなくてはならない消費がある、という部分を出さずに金利とかの話をしてもどうとでも言えてしまう。

累積の財政赤字に問題が無い、といいたいのは分かるし幾つかの前提を置けばそう言える事にも異論は無いが、その前提が矛盾が無いように置くのは結構難しいのでまず閉じたモデルを出してそれがちゃんと出来ている事を示せ、というのが経済の話の作法では無いかねぇ。

財政赤字、と言った時に借り入れで賄うのは従来は大前提なのに、「財政赤字は食らうディングアウトしない」と先に言っておいて、あとから「でもここで言う財政赤字は普通と違って借り入れで賄わない事を想定してます」とか言うのは議論のやり方として良くない。 普通と違う仮定を置く時はまずそれを先に言うべきだろう。それは会計の等価な話とは全然別で、そっちの方こそ政策論議では本体のはずなのに。

給付の話

実物的な生産能力が大切なのに財源ばかりが注目されてきたが、政府はいつでも資金を出せる、というのは基本的には正しいと思う。 ただ生産能力に対しての取り分を政府が決め過ぎるのは問題で、給付の大きさはそういう問題の代替指標的に扱われているとも思う。

やはりモデルが閉じてない中ではこういう議論は出来ないよなぁ。生産の何割を給付が持っていって良いのか、というのが議論出来る枠組みじゃないと。

ただ、既存の議論も同様に手を抜いてどうとでも言える事で危機感を煽ってるのだから同罪、と言われればそれはそう、とは思う。自分は手を抜いてないでちゃんとしてる人たちとだけ話をすれば良いとは思っているが。