選挙に向けて経済統計を見直す
参議院選挙が今月あるらしい、という事で経済統計を見直す。 7月末更新の統計が多いのが難点だが。
いい機会なので自作アプリの「統計グラフ!」の更新チェックなどをデバッグして改善したりもした。 以下選挙に向けて見た(更新した)統計を簡単にまとめておく。
GDP関連
まずは生産。という事でGDPから。
コロナ禍からの回復は終わってそうだが少し伸び悩み気味ではある。さらに気持ち消費が弱めか?
生産年齢人口の減少の影響もあるだろうから、生産年齢人口一人あたりGDPを見ておく。
少し傾きが減っているようにも見えるが、まぁまぁとは言えそう。
生産年齢人口一人当たりを見るので、65歳以上の労働者がどれくらい増えているかも見る。
意外と伸び悩んでいる。生産年齢人口一人あたりGDPの伸びが、65歳以上労働者が増えたから、というのは正しくなさそう。
65歳以上の労働者の生産性をどう考えるべきかは難しさがあるが、個人的には遊んでしまっているリソースをうまく使っている度合いと判断して、 生産性が低下している事は問題視しなくてもいいんじゃないか、という気はしているが、 この結果はそういう話をそもそもする必要は無い、という事を示唆している。
逆に65歳以上人口はまだ増えているはずなので、もっと高齢者の労働者を増やす余地がある、という事かもしれない。
失業率関連
次に政策で改善の余地がある部分として、失業率を見ておく。
失業率はかなり低めか。コロナ禍前に完全に戻ったという訳では無いが、もともと近年稀に見るレベルの低さだったし、今も低い。 ほぼ完全雇用と言って良いのではないか。
一応年齢階級別も見ておく。
若年層の高失業という世界的に見られる現象が、我が国だけは何故か近年解決しているように見える。 このくらいだったらば年齢階級別に見なくて、単に失業率だけを見て判断しても良さそう。
税収
消費税などを議論するために、税収の項目別推移を見ておく。
2020年以降、突然全ての税項目で税収が大きく伸びている。 これはかなり驚いた。
法人税や所得税の不安定さや一貫した下げトレンドが消費税しか無いという印象を生んでいたが、ここ5年くらいはそうした印象も無い。 GDPの伸びがそこまででも無い事から考えると法人税の大幅な増収はかなり意外な印象を受ける。
個人的には2010年代中盤くらいからの所得税の伸びは一時的なブレに過ぎないのでは?と疑っていたが、 これだけ長期間続くと90年代くらいから続いていた大きなトレンドが反転しているように見える。
本当は税収が伸びた結果財政収支がどうなったのかも見たいのだが、決算は二年前になってしまう上に更新が7月末なので、ここ数年の伸びの影響はわからない。 一応現時点の財政収支も確認しておく。
さすがに数年前だとコロナ禍での財政出動の影響が大きすぎて、税収の影響なんて吹き飛んでしまう。
社会保障も同じ時期の更新なので社会保障費もまだ良くわからないのだよなぁ。少し前のグラフになってしまうが一応見ておく。
年金は意外と抑えられているな。 医療費はどうにか出来たらいいなぁ、という項目ではあるが、どうにか出来るのかは良くわからない。
物価
物価高なのか?という話も良く聞くので、今回GDPデフレータも集計してみた。
2023年、2024年は大きく増えていてそれぞれ4%、3%上昇くらい。 そんな変わらないだろうが一応CPIも見ておく。
少し早く反応していて、デフレータよりも安定している(3%上昇が続いている)が、 パーシェかラスパイレスかとかそういう話の範囲に思う。
とりあえずもうデフレでは無い、とは言い切って良さそう。
ターゲットよりも少し高いので、引き締めるべき、という意見もありそうだが、 もう少しこのままキープしてデフレを完全に脱却したほうがいいのでは、という意見もありそう。 自分の考えでも、3%をどう判断すべきかは良くわからない所だが、少なくとも2%より上をしばらくはキープした方が良いとは思う。
サマーズも有効数字は1桁だと認識すべき、という話は良くしているし、2%の上下1%範囲内をターゲットするなら、 このくらいはターゲットの範囲内とも言える。 4%ターゲット派からすればむしろもっと上げろという話になる。
個人的には3%という数字は思ったより高くないな、という気はする。 デフレータの4%上昇の方が肌感覚には近い。 そして4%ターゲットはかなり高いんだな、と思う。
どちらにせよこのままどんどん増分が増えてしまうのはまずい、というのは間違いないので、 インフレのリスクを考えるべき段階には来ているだろう。 対策を取るべきかは人によって判断が分かれそう。
以上を踏まえた自分的な印象
ここまでは自分の考えも書いているとは言えハードデータだが、選挙という事なのでより主観的な自分の解釈というか印象とか判断も考えてみる。
GDPはこのくらいなのでは無いか。失業率も十分に低い。これ以上生産にマクロな改善の余地は無いように見える。 だから景気対策などは不要だし産業政策なども良くない。
消費もまぁこのくらいなのでは無いか。消費は少し増やす余地はあると思うが、生産が追いつかないリスクはかなり現実のものになってきているので、 以前ほど消費を増やすのがメリットが大きい事にはならなくなってきている気がする。
税収は支出がコロナ禍の影響が大きすぎて判断が難しいが、 予想外に所得税と法人税が上がっているので、以前思っていたほど消費税の増税を急ぐ必要はなさそうに思う。 消費を刺激するのは上に述べたように良くないので消費税減税の必要は感じないが、 所得税や法人税でなんとかしろ、という意見は、5年前よりは聞く余地が増えているように思う。
インフレ率はキープでいい気がする。少し金融政策は戻し始めてもいいかもしれないが、急激に戻すリスクもまだ高いため、 引き締めよりは徐々に戻す感じで良いんじゃないか(実際現状はそうなっているので現状の方針を維持という話)。 財政政策方面での対策は不要に思う。
逆にインフレ率が急上昇するリスクはそれなりに見るべき段階に来たと思う。 これまでよりは財政赤字のコストは高くなった。 ただ、まだまだ財政赤字は増やしていくのが妥当で、まだ究極の選択をしなくてはいけない段階では無いと思う。 幸い生産の水準は十分で消費もそれほど増やす必要は無いので、コロナ禍の財政出動を引き上げて他は現状維持でいいんじゃないか。 ただ消費がどのくらい財政出動に支えられているかはわからないので、 現状はインフレリスクよりは消費が低迷するリスクの方が高い気はする。
医療費の高騰を抑えられたら素晴らしいが、まぁ現実的には難しいんじゃないか、という気はする。 年金はかなり現状は頑張っているので現状維持でいいんじゃないか。 やれるというのなら医療費の対策が一番重要度は高そう。
高齢化対策に関しては現状はかなり頑張った成果と言って良いんじゃないか。 何かを改革するよりは良い所をキープしていく方が良さそうに思う。
全体的には、経済に関しては現状はかなり良く頑張れているので、 生産を増やしたり消費を増やしたり物価を下げたりするのを目指すのはやめたほうが良さそう。
基本的には経済関連は現状の方針を維持して、他の優先項目を考えていくのがいいのではないか。