【書籍】国家はなぜ衰退するのか
【書籍】国家はなぜ衰退するのか
amazon: 国家はなぜ衰退するのか 上: 権力・繁栄・貧困の起源
アセモグル、ロビンソンはhimaginary氏のブログで以前からちょくちょく名前が出ていたので気になっていたのだが、 audibleの無料に入っていたので聞いている。
2025/10/15 21:27:11
最近はアセモグル-ロビンソンをaudibleで聞いている。話がなかなか進まないが、内容はなかなか面白い。
2025/10/16 09:29:06
アセモグル、文化的な側面ではなく、歴史的な制度の帰結なのだ!って言うが、それを文化と呼ぶのでは?という気もする。 地理的な側面も、ある時代には有利に働いてある時代には不利に働くのは何もおかしくは無いよな。
もちろんその時代の違いは何なのか?というのが重要という点ではこの本の指摘は有効という事にはなると思うが。
2025/10/17 13:44:10
アセモグル、3章まで聴き終わった。割と説得力は感じる。
収奪的か包括的か、というのは両極端なので、エリートがある程度存在してエリートの政治でありながら多元的な場合はどうか、などの話も気になるところだな。
2025/10/20 09:39:29
アセモグルを聞いている。
収奪的政府が経済発展を進める事もある、というと、では収奪的政府でありながら経済発展するかしないかの違いはなんなの?という気がするな。
中央集権が上手くいってないと多元的でもダメ、というのが、なんか微妙だよな。因果関係ではなく後付けでうまく行ってないものにレッテルを貼ってるだけのようにも見える。
全ての元凶と言わずに、制度的なものが与えた影響とそのメカニズムを詳しく見ていく方が良い気もする。
上を聞き終わり 2025-10-31 (金)
上を最後まで聞いた。
説得力はあまり無く、衰退している国家の話をいろいろして「収奪的制度のせいだ!」と言うだけで、反映している国家の話をいろいろして「包括的制度のせいだ!」というだけを繰り返す感じ。 いろいろな要因のどれが効いているのかを検討するでも無く、なぜ自分の示す要因が重要なのかを示す訳でも無い。 そういう訳でこの本だけではあまり良い本では無いなぁ、という印象。
だが、本でない所でちゃんとその辺の論証はしているのだろう、と思うのであれば(そしてしているからこそノーベル経済学賞なのだろう)、 反映に必要な制度について考える材料は提供してくれている。
制度のもたらすインセンティブが重要だ、という事自体は、経済学が好きならまぁそうだろうな、と納得出来るものだ。 そしてどういう制度はどういうインセンティブをもたらすか、どういうインセンティブになるような制度だと良さそうか、 というのを考えるのは価値はある気がする。
強い中央集権がありながら、その権力が多元的な主体で構成されている必要がある、という、 ある意味矛盾した要請が両立していないといけないのは、開発経済学的な困難さを表しているのだろうな。
日本のメーカーやベンチャーについて考える
変化を恐れる権力者が新参者を押さえつける事が成功する環境は駄目だ、というのが本書のメッセージに思う。 ではプログラム業界はどうだろう?
例えばlivedoorショックやpezy社の逮捕などは、新参者に対する反発という側面は明白にあったと思う。 この本を信じるのであれば、ああいうのの反対側に倒すべき、という事だよな。 少し怪しい部分があっても新参者の利益はむしろ強めに守る方が良い、という。
戦後のメーカーが立ち上がる時には、それなりに新規の参入が可能だったのは間違いない。どのくらいそれが守られていたのかは良く分からないが。 一方で現在新しいメーカーを立ち上げるのは、困難に感じられる。気のせいかもしれないが。
例えば現状、Androidのスマホやタブレットを作るメーカーを日本で立ち上げようとしたとする。 実際日本は人件費もだいぶ安くなってきたし、台湾や韓国はだいぶ高くなってきたし、もう価格という点では勝負が出来るんじゃないか、という気がする。 Androidの初期の頃(1.6くらい)では日本のメーカーはバージョンアップに全くついていけずろくなものじゃなかったが、 今ならだいぶ状況が違うのではないか?当時ほど陳腐化も早くないし。 今なら日本製のAndroid端末の需要は結構あるんじゃないか、という気もする。
でもそういうのを簡単に出来る気はあんまりしないよなぁ。 それが出来ないのは政府とか制度とかの問題というのもあるが、 そもそもにAndroidのハードウェアは一社で全部作る類のものでは無いからだよな。
ソフトをやる会社があってハードをやる会社があって、その両方があってやれる。 どちらかがあればもう片方を作るのは出来そうに思うが、両方無い所に作るのは難しいので、今の日本でやるのは困難を感じるんじゃないか。 逆に言えば、やりたい奴が両方に同時にいれば、やれそうな気はする。
銀行から融資を受けたりお金を集めたり、は出来る気がする。これはpezy社がお金を集めているのとそれほどは変わらないんじゃないか。
NECや富士通に潰されそうになった時に政府が守ってくれるか?というと守ってはくれない気もするな。 そこはもっと強固に政府からメッセージがあった方が良い、というのがこの本の主張なのだろう。 実際政府は経団連との結び付きが強い印象があり、それは新参者を排除する方向に働く。
ただ、韓国の方がそういう側面は強い気がするな。日本の方がメーカーは複数あるし、メーカー自体の権力もそこまでは無い気もする。 政府は小さい企業を強く守ってくれるとは思えないが、 割って入れないほど大手メーカーとの結び付きが強い、とも思わない。
この本を信じるのなら、もっとベンチャーの利益を絶対に不当には奪わない、という強いメッセージを発するべきなんだろうな。 それは出来ていない気がする。
ベンチャーを奨励する、みたいなのは良く見るが、 この本を信じるなら、本当に必要なのは奨励するのでは無く、 立ち上がったものは絶対に守るという姿勢だよな。 そちらを強化すると立ち上げは民間が勝手にやる、というのがこの本の主張だ。 だから助成金とかで奨励するのは方向性が間違っていて、 成功したら絶対に奪われない、という財産の保証みたいな所をもっと強化すべき、という話に思う。
これは良さそうな気もするな。一回日本でやってみてもいいんじゃないか。 少なくともlivedoorショックでもpezy社の逮捕でも、メッセージは正反対のものを発してしまっている。 グレーな部分があったら白な部分も削ってしまう、というメッセージでは無く、グレーな部分があっても黒以外の部分は削らないという強いメッセージを発するのが良い、という話。 そういうコンセンサスは無いが、それこそが大切だ、というのはありえる気がする。 実際livedoorショックの影響は当時リアルタイムでベンチャーに居た身としては凄く大きかったと思うし。