728x Molecular BiologyのPart3を全部終えた!
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今日、728xのPart3, Massachusetts Institute of Technology: Molecular Biology – Part 3: RNA Processing and Translation - edX を無事最後まで終えた。 めちゃくちゃきつかったが頑張った!
このコースは8週間の、セルフペース(好きな時期に始めて勝手に進めて良い)という形式という事になっているが、 分量が多くて自分には期限内に終わらせるのは全然無理で、二回受講した。 なんでセルフペースなのにこんな締切厳しいの…
一回目が1/18〜4/24で、二回目の今回が6/7〜7/28まで掛かった。途中間が開いているとはいえ、今年の前半半分くらいはずっとこれやってた感じだ。
後半は主に以下の2つ。
- RNA Splicing
- RNA Turnover(主に分解)
この分子生物学のコースははだいたい以下のように構成されていて、
- Part1: DNAの複製
- Part2: DNAの転写
- Part3: RNAの翻訳
さらにPart 3の前半は翻訳だった。 ようするにこのシリーズは3つでセントラルドグマを扱うので、Part3は前半の翻訳で重要なところは終わり、残りのSplicingとTurnoverはおまけっぽい内容なのかな? と油断していたのだが… 全然そんな事無かった。
まずAlternative Splicingによって、同じgeneから複数のmature mRNAが出来る事で生成されるタンパク質が異なり、 これがcomplexを形成する時などに普通に使われている、というのは、なかなか衝撃的な内容だ。 DNAに書かれた通りにタンパク質が出来るという素朴な世界観は大きく間違っていて、 どうSplicingされるかにより結果は大きく変わり、それは環境の影響を受ける、という。
細胞の分化などにも普通に関わってきて、生物の理解や進んだ医療の可能性にものすごく重要で、 そんな重要な事がここまで勉強を進めないと理解できないというのに愕然とする。
Splicingの違いは髪の毛と歯と筋肉くらい違いうる訳で、例えば人間同士の個人個人のDNAの違いなんて些細な事なのでは無いか、 と思わせるような、世界観に大きな変更を迫られるような、重要な事実である。 現代的な世界観のための教養として皆が理解しているべきと思うのだが、教養のためにここまで勉強するのは無理だよ…という気分になる。 生物の最低限の基礎ってどの範囲なのか、全然わからないよなぁ。
そして最後のRNA Turnover。これはRNAの分解にまつわる話。 こちらはSplicingほど大きく世界観に影響を与えるものでは無いが、 それでもmRNAの5’キャップやpoly-A tailの意味が初めて明らかになるところなので、 生物の勉強したのなら知っておきたいところではある。
これをやらないとmature mRNAのstabilityに対するメンタルモデルが形成出来ないのでmRNAの量、 という、割と重要な問題についての感覚的な理解が出来ない。 だからある程度は知っておくべきなんだろうな、と学んだ後には思うようになった。
そんな訳で、Turnoverは転写制御ほどの重要さは感じないけれど、やはり基本的な事は学んでおきたいところだが、 これがなかなか複雑なので最後に来てしまうのは仕方ないと思わせるものがある。 さらに不良なmRNAを分解する仕組みは翻訳と転写にまたがる非常に複雑かつ大規模な仕組みで、 これはここまでやってきた事を理解してないと理解できないという点で、学年末試験みたいな内容だなぁ、と思った。 Exon Junction Complexとかなんじゃそりゃって感じのもので、 驚きの事実がいろいろとある。 核の中の転写の結果が残って翻訳と合わせて分解に関わる、とか、 そんな事があるのか。
さらにTrp attenuatorなどの翻訳と転写にまたがる制御の仕組みもここで扱われていて、 こういう制御もあるのか、と知っておく事は生物というものの理解にも重要に思う。
そしてNMD、NSD、NGDの不良mRNAの分解に関しての話もなかなかに複雑でいろいろな事が出てくる過程で、 Ubiquitinがくっついてproteosomeで分解されます、みたいな事が当然知っている事として出てきてしまうあたりに、 この過程を学ぶ前提条件を満たす難しさが伺えて、 それを終えてこの場に立った自分を褒めてやりたい気持ちになる。
そういう訳で意外とちょろいと思った後半は全然ちょろくなく、 特に最後の方は全然進まなくてめっちゃ辛かったが頑張った。
このノートの膨大な内容を見れば、このシリーズがいかに過酷かが伝わるだろう。>Home - Molecular Biology 728x
生物の勉強はこの辺で終わりでいいかなぁ
内容的には最後の方は2016年とかの論文が関わるようなレベルで最新に近くて、 人類の理解している最先端がこの辺かぁ、という感じはだいぶ出ていた。 大学院レベルの講義にありがちな、専門外の人はここまで知らなくてもいいよなぁ、 という部分も結構あったが、セントラルドグマを深くしっかり理解する、 というのは、生物という学問を自分の中で体系づけるのに必須な事で、 とても良かった。
一方で本来興味があったのはもっと生理学的な話で、そこから思えば随分と遠くまで来てしまった気もする。 結局人類はまだいろんな事が理解出来ていなくて、ようやく大腸菌を理解出来るかどうか、というところまで来た程度で、 イースト菌くらい複雑になるとわからない事だらけで、 ちゃんと理解しようとするとどの程度はわかってどの程度はわからないのか、という事についてのしっかりした理解が得られて、 そういうのは今後より生理学的な事をいろいろ学んでいく時に役に立ちそうな事とは思った。 ちゃんとわかっているしっかりとした土台を持つ、というのは大切な事だよなぁ。
そして当初の意図であった、生理学を勉強するための生物の基礎を身につける、というのはあきらかにやりすぎなくらいに十分な基礎が得られたので、 さすがにこのくらいにしておいてもっと生理学的な話に進むか、という気分になっている。
という事で、2021年の6月に何気なく生物を勉強しようとした事から始まった生物学の勉強という旅路は、 意図せず2年にも渡る長い過酷な勉強の日々になったが、 ある程度この分野をしっかりと本格的に学んだという達成感とともにこの辺で終わりでいいかな、という気分になっている。 ここまで専門分野でない事をしっかり学ぶってMOOC以前には出来なかった事だよなぁ。 新しい時代の新しい人類になっている気がするね。