生物学を勉強しようと思う で良さそうだったこのシリーズを読んでいく。 メモをこのページに書いていく。

アメリカ版 新 大学生物学の教科書 第一巻 細胞生物学(ブルーバックス)

2章は化学の話

電気陰性度とかモルとか質量作用の法則とか、いろいろ懐かしい言葉や忘れている言葉が出てくる。 化学って大学卒業したあとはあんま接点無かったよなぁ。

一方で生理学をやったおかげでどの辺がどんな風に生物で必要になるかがまぁまぁ分かるので、 昔より楽しく学ぶ事は出来る。

高校の頃の膨大な化学の知識を思い出し、一般教養について考えるなど。>知りたい事を調べるだけではたどり着けない教養を学ぶ基礎力

3章 タンパク質とかの話

20種のアミノ酸とかペプチド結合の性質とか。 生理学でいろいろ出たあとに見るとめっちゃ興味深いな。 アミノ酸とかタンパク質はスポーツ的な側面からも関心が湧くよなぁ。

高校生の頃、ペプチド結合ってなんで大切なのか全然分かってないまま勉強していたが、 タンパク質という物の重要性を理解したあとにこの辺を学ぶとめちゃくちゃ重要に感じられるんだよねぇ。

タンパク質の一次構造とかはめっちゃ系列ラベリングっぽい問題だよなぁ、とか思う。 単語が20個しか無い所はNLPとは違う所で、 トリグラムくらいではあんまスパースにならないんだろうね。言語モデル的な物に偏りがあるのかは知らないけれど。 以前生理学をやった時は系列ラベリングを勉強する前だったので、今見るとまた印象が変わるやね。

タンパク質の構造決定とかも、hikifunefmでなんかやってたよな。今となっては割と身近に感じられるトピックだ。

二番目に構造が決定されたタンパク質の論文が1961年とか書いてあって、そんな最近なのか!?と驚くなど。 でも考えてみたらこういう系列データで長い物を扱うにはコンピュータは必須だろうから、 解析が進んだのはここ数十年なんだろうなぁ、という気はする。

タンパク質の次は炭水化物と脂質。この辺もなかなか興味深い。 やはり具体的に医学の話に進んでしまうよりも、個々の化学的な話をしっかりやってくれる方がいいよな。 という事でこの本を読むのはなかなか良い選択だった気がする。まだ生物っぽい話は始まってないが。

4章 核酸とかDNAの化学的な話

ヌクレオチドが塩基、ペントース、1〜3個のリン酸基からなり、ペントースとリン酸基の間に縮合反応が起きてそれをホスホジエステル結合と呼ぶ、というのは高校生の頃はやらなかった気がするな。 こういう根本的な所を知るのはなんか喜びがあるよな。

5章 細胞の構成要素とか

ここから細胞の話が続くようで、5章は概要というか構成要素の説明があって、各詳細は後続の章、という形のようだ。 リボソームとか小胞とかゴルジ装置とかリソソームとかミトコンドリアとかプラスチド(葉緑体)とかの構成要素の話。なかなかおもしろい。 ファゴソームとかの説明もある。

6章 細胞膜

リン脂質とタンパク質と糖で細胞膜が出来ている、みたいな話が細かく行われる。 ここで2章や3章でやった親水基と疎水基の話などがたくさん出てくるので、凄い基礎的な所から理解出来た気分になる。 なかなか良く構成された教科書だな。

エンドサイトーシスの話もなかなかおもしろい。 コレステロールは肝細胞によってLDLというタンパク質に取り込まれて血流を流れる。 コレステロールを必要とする細胞がLDL受容体を合成して受容体依存性エンドサイトソーシスの受容体として使って取り込む。

細胞一つが一個の単細胞生物みたいだよなぁ。

生物の面白さとと難しさ

この本は生物の面白さを良く伝えていると思うのだが、その一因は化学的な所から全部分かった気分になれる、 という要素がある気がする。

その為には化学的な所から全てを説明する必要があるので、内容としてはかなり高度な事も含んでしまう。 この面白さを高校の授業で伝えるのは難しいよなぁ。

一方で生物はまだ分かってない事やこの本が対象とする読者に説明するには難しすぎる事もたくさんあって、 だから全部を根本原理に立ち返って理解出来る訳では無い。 そうした時に根本原理まで遡らずに分かる事を分からせるのと、 根本原理から分かる事をうまい事バランスを取って、全部分かった気になりつついろいろ分かった気にさせるのが、 この本がうまく書けているな、と思う所だな。

今ちょうど6章まで読み終わった所で、細胞の話から始まって細胞膜と来て、次に多細胞的な要因として相互作用というか、そういうのに進んでいく訳だよな。 わかりやすく構成されているよな。 普通の教科書の構成なのかもしれないけれど。

読み終わった感想など

7章は細胞間の情報伝達で、無事最後まで読み終わった。7章はベランダで読んでたのでここにメモを残していないが、なかなか良く構成されていて、一つ上に書いた感想のまま最後まで読み終えた。 ブルーバックスというと読み物的な物を想像するが、この本は割と普通の教科書だった。 良い教科書だったと思うので2巻も買って読もうと思う。

1巻は小さい所から始めて細胞とその連携まで進むという構成。 最初は化学的な分子の話から始めて、タンパク質、細胞、細胞の連携と進んでいく。 DNAなどは化学的な話だけであまり詳細は扱わない。

序盤の化学の所で出てくる水の性質や脂肪やタンパク質の性質があとの章でふんだんに使われていくので、 読んでいて根本から分かった感じがあって良い。

一方で細胞より大きな臓器とか消化とか筋肉とかそういった話はあまり無い(それらで使われる反応は良く出てくるが)。 それらは三巻で扱われる模様。

生物の進化の歴史的な話が随所に出てきて、知らない事も多くて興味深かった。 動物と植物が結構大きく分かれているのは驚きだねぇ。

有機化学で昔勉強したような事が一杯出てきて、随分忘れてはいるけれどいろいろ思い出しながら読むとたくさんの応用が述べられていてエキサイティングだった。 有機化学の勉強はこういう内容をやる為のものだったんだなぁ、と今更ながらに理解した。

あと、Kindleのレイアウト固定書籍だったのだが、文字が大きくてBOOXで読むのにとても快適だった。 まさにBOOXで読む為に書かれたかのような本だ。 無職の優雅な時間の過ごし方として、体験がとても良かった。

アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第2巻 分子遺伝学 の学習メモ

一巻が良かったので、二巻も読む。

8章 細胞分裂と減数分裂

章立ては一巻から続きらしい。ブログ的には都合が良いな。

で、8章は細胞分裂。 遺伝子というとDNAのゲノム的な話にすぐいってしまいがちだが、こういう染色体レベルの話もなかなかいろいろあるよなぁ。 細胞分裂はガンとかにも関わるので、詳しく見ておくモチベーションも高い。

減数分裂はすごい複雑なしくみで驚く。 しかも結構失敗する(10〜30%の妊娠で失敗しているがだいたい流産する)というのは驚きとともに怖いねぇ。 キアズマで父由来と母由来が混ざるので姉妹染色分体の分離でも別物になる、ってのはへーって感じだ。

その理屈で行くと減数第二分裂で分裂する姉妹は結構似ている事になるが、まぁ精子とかのうち2つだけ似てるって言われてもそれが着床する確率はほとんど無視できるか。 卵子の方は二卵性でも似た双子と似てない双子が減数第一分裂由来か第二分裂由来かで違ったりするんだろうか。 まぁ父型が違うので似た兄弟か似てない兄弟か、程度の違いでしか無いか。

9章 遺伝、遺伝子と染色体

まず遺伝で観測される事実から入って、それらを説明する遺伝子の考え方から染色体の話に進む。 プログラマ的にはゲノム解析が無駄に身近なのでそう考えてしまいがちだが、 自然科学としてはこういう道筋があるべき姿だよな。 どういう実験で何が観測されるのかを知っておかないと、世界観が薄っぺらくなるよな。

雄と雌の決定が、生物によって仕組みがバラバラというのは初めて知った。 ミツバチの雄は半数体、雌は二倍体ってそんなのあるのかよ… ショウジョウバエのX染色体の数と常染色体セット数の比が1以上だと雌、って比ってなんだよ比って。そんな雑な決定方法でいいのか、ショウジョウバエ。

10章 DNAと遺伝の関係と複製

染色体の中でDNAが遺伝に関わる物質である、という事がどうやって明らかになっていったのかの実験の過程を見ていき、 そのあとDNAの複製の仕組みを詳しく見ていく章。 なかなか面白い。

真面目に勉強しないと突然二重らせん構造が出てきて塩基配列で遺伝情報がコーディングされている、という所から始まりがちだが、 生物学としてはどういう実験からどういう結論を出したのか、というのを見ていく事になる。 物理だってヤングの実験とかいろいろ見て行き、実際にやったりもして学んでいくよな。

前の章で遺伝子とか染色体について、メンデルとかの様々な実験による知識の蓄積があって、 それを元にDNAが遺伝子の情報を持つ遺伝物質である、という事を明らかにしていく。 うーん、自然科学って感じがするね。なかなかにエキサイティング。

DNA複製もなかなかすごいな。RNAプライマーから始まる所とか、スライディングDNAクランプとDNAポリメラーゼで合成していくのとか、 岡崎フラグメントがでいるがそれはDNAポリメラーゼIとDNAリカーぜでつなげられるとか。 ナノスケールのオーダーと思うが、リアルにナノマシンだよなぁ。

そして最近良く聞くポリメラーゼ連鎖反応。ポリメラーゼってDNAポリメラーゼの事で、 こんな良く分からない生物のDNAポリメラーゼで別の生物のDNAが複製できるのか〜と驚くような、 核酸は同じだから当然のような、不思議な感じだ。

10章もなかなかちゃんと理解した感じがする。

11章、遺伝子発現とタンパク質合成

あまり興味が無いかと思った話題だが、読んでみると想像以上に面白かった。

割とさらっと流されがちな転写が、RNAポリメラーゼを使った興味深い過程で、イントロンとか不思議な動作をしている事など、 ハイブリダイゼーションが電子顕微鏡で確認出来るという驚きの事実など、面白い事が多かった。

また翻訳もリボソームが非常に(チューリングマシン的な意味での)機械っぽい挙動で、リボソームが汎用だというのは驚きで、 この2つの過程は非常に面白いと思うようになった。

コドンとアミノ酸の対応も、実際にどうやって実験で確かめられていったのか、という話が面白く、 11章は思っていた以上に面白かった。こういうのってちゃんと学ぶ意義を感じるよねぇ。

12章、遺伝子変異

一つの細胞において一日あたり約1万6000回の損傷が起こってて80%が修復機能で修復される、って残りの20%は…
変異した細胞がそのまま分裂して増えていかなければまぁいいのかもしれないが。 シトシンがウラシルになるというのがなぁ。これがチミンだったら大した事無かっただろうに。 あえて変化する方が進化的には有利だったという事なのかねぇ。

遺伝子スクリーニングは可能性を感じるね。今後数年で判定出来る病気は一気に増えるんだろうなぁ。

13章、遺伝子発現の制御

この章もなかなかおもしろいな。 DNAは同一なのに細胞が分化するのはまさに発現の制御のおかげな訳で、 重要な事が素人の自分でも良く分かる。

特定の配列に特定の転写因子が結びついてRNAポリメラーゼがやってくる、という仕組みが基本な訳だが、 この転写因子について、かなり細かい理解が進んでいるように見える。 これだけわかっていれば、皮膚の細胞を取って歯を培養したり骨髄を培養したり出来そうなもんだが、 なかなか難しいのかね? 転写因子を細胞膜の中に注入出来れば良さそうだが。その位出来そうだけどどうなんだろう?

この辺になると一巻を見直さなきゃいけない事も増えてきて、なかなか大変。 例えば今読んでいるのは、ヘリックスターンヘリックスの所だが、 DNAの塩基配列と糖-リン酸のそれぞれに沿って配置される、みたいな時に、 核酸の構造ってどうなってるんだっけ、と見直したりする。

こういう前に進むのに見直しが多くなると挫折してしまいがちなので、根性入れて一気に乗り切りたい。

2巻読み終わり、感想など

分子遺伝学、と書いてあって、でもゲノムとか組み換えDNAに関しては3巻という事で、いまいち2巻に関心は湧かなさそうだなぁ、 と思って読み始めたが、予想に反して面白かった。

ゲノムの前に染色体とか遺伝子、という考え方があって、それは減数分裂とか細胞分裂など重要な話題を多く含んでいる事を知った。 割と良く聞くようになったポリメラーゼ連鎖反応なども詳しく理解出来たし、細胞の分化などは今後の応用も期待出来そうだし興味深いトピックだった。

また、遺伝子の発現に関する話は応用の範囲も広そうで、細かいメカニズムを学ぶのはとても有意義に思った。 ゲノム自身は3巻という事だが、コドンやその配列に関わる所は折に触れて出てきて、 現代的なそれぞれのトピックという気がして興味深かった。

予想よりも面白かった2巻だが、後半は一巻の知識や二巻の前半の知識が多く出てきて戻って見直す機会が多く、なかなか大変だった。 長い教科書を読む大変さってあるよなぁ、とか思った。でも頑張って読み終わったぜ!

アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第3巻 生化学・分子生物学

ということで三巻も読んでいきます。

もともと生理学で代謝とかが面白くて興味を持ったというのに、3巻まで来てようやく代謝が出てくる。 ちゃんと学ぶというのはこういう事だよなぁ。

14章 エネルギー、酵素、代謝

冒頭のアスピリンの作用機序は1971年に明らかにされた、ってめっさ最近だな。 生物って凄い最近にめっちゃ進歩してるので、数学とか物理の感覚でいると驚く事多いよなぁ。

序盤は熱力学的な話が続く。第一法則、第二法則とかはいいとして、エンタルピーあたりから「そんなのあったな〜」的な感じが強くなっていくな。 発エルゴン反応とかは普通に初耳だがどっちがどっちかすぐにわからなくなるね。

酵素とか基質の解説をしっかりしてくれるのはいいね。こういうのをちゃんとやっておくのは生理学に行く前に必要な事だよなぁ。

後半は酵素とその活性、阻害のメカニズムについて詳しくやる。酵素に関する理解が深まった。

ただ酵素がなんでこんなに特異性を発現するのかは良く分からないね。 複雑な形が一致するかどうかだけでは、一致してても結合してくれないのでは無いか、という気もする。 ビームアンカー的なのが無いと難しいような?なんかそういうメカニズムもあるのかもしれないが。

15章 クエン酸回路、呼吸鎖など

  • 解糖系: グルコースを2つのピルビン酸に
  • ピルビン酸酸化: ピルビン酸をアセチルCoAに
  • クエン酸回路: アセチルCoAをNADHが3つ, FADH2, GTPを一つに

というあたりの話。この辺は生物勉強してるって感じで盛り上がるね。

その後の呼吸鎖も面白い。 NADHからH+を取り出すエネルギーを使ってミトコンドリアの内膜の内外にH+の濃度差を作り、 この濃度差を使ってATPシンターゼというモーターを回してATPを合成する。 モーターが本当に回った実験、とかも面白いね。 この具体的な感じが最近の生物学って感じするよなぁ。

16章 光合成

光合成はなかなか複雑な過程だなぁ。難しい。 葉緑体とミトコンドリアの類似性、特にATPシンターゼ周辺の構造の類似性は偶然なのかね? 同一先祖だったりするのかしら。ゲノム比較とかはどうなってるんだろう?

カルビンサイクルのような中心的な部分が判明したのが1950年というのは、凄い最近で驚く。 そんな最近まで光合成って良く分かってなかったのか。 そして今では専門家でもなんでも無い自分がここまで詳しくそれを学べるというのも不思議な感じだな。

C4の光合成とか無茶苦茶複雑だなぁ。植物というのも不思議な存在だよなぁ。

17章 ゲノム

個人的にはゲノム解析とかってちゃらちゃらした話題という感じであまり好きじゃないのだが、 現代の生物を考える時には避けても通れなかろうということで読んでいる。

原核生物のゲノム決定が1990年代って驚きだよな。自分が学生の頃とかはまだそんなレベルだったのか。 2003年に人ゲノムが決定との事だが、この10年間の進歩は目覚ましかったのだろうな。 バクテリオファージが1977年との事なので、ここから原核生物までの道のりがむしろ長く感じられる。

大腸菌とか線虫の話はおもしろいが、人間の話はちょっと表面的過ぎて面白くないなぁ。 やっぱり人間は勉強する対象としてはちょっと複雑過ぎる気がする。

18章 組み換えDNAとバイオテクノロジー

前半はDNA組み換えの実際の話とか組み替えたDNAをどう挿入するか、という話などで、 後半はニュースの解説記事的な、より最近の話題の解説という感じになっている。

前半も個々の実験などが複雑になっていてちゃんと理解出来る気も自分で出来る気もしない。 この章以前にくらべると表層的な理解に留まる内容となっている。これは仕方ないだろうねぇ。 そうであるからこそ、組み換えDNAとかゲノムの本とか記事とかを読む所から始めてもちゃんとした理解には至らないのだろうなぁ、とは思った。

ただ、ここまでさんざんゲノムや遺伝子の話をしてきたので、 解説記事としてみれば理解度は非常に深いと言える。まぁこれだけ長いページ数を読んできたのだから当然っちゃあ当然だが。

人工DNAからの生物作成は成功していると同時に20年も掛かっているというのが、 進んでいるような先は長いような気持ちになる。 最後に目指すは人工生物だろうが、先は長い気もするなぁ。 ただめっちゃ進歩している分野でもあるので自分が死ぬ頃にはだいぶ状況も変わっているかもしれないが。

可能性はめちゃくちゃ感じるしうまく行っている応用もあるが、意外と実現にこぎつけている成功例は少ないのがかえって意外に感じられるな。 どの辺に難しさがあるんだろう。

最後の遺伝子組み換え食品に関しての安全性とかについてはめちゃくちゃ肯定的で清々しい態度である。 ただ、そもそも不稔性のみかんとかバナナとか食べてる方がよっぽどヤバそうだし、 それ以前に小麦とかもやばそうな訳で、人類はそういうやばそうなのをずっとそうとは知らずに食べてきたし、 今更それらを理解したからといって野生種だけに食材を戻すという事もする訳にも行かないので、 それを理解した上でなら、単に遺伝子を少数挿入する方がよっぽど安全性は高いという気はしてしまう。 減数分裂回りの突然変異は染色体の本数レベルで違ってくる訳だし。

あと、18章は一巻と二巻を見直さないと分からない事も多くてなかなかきつかった。 まぁ終盤だからね。そういうものでしょう。

最後の学んだことを応用してみよう、とか、途中の実験とかがちょくちょく文章がおかしいな。 もとの文もこうなのか訳が腐ってるのかは分からないけれど。17章まではそういう事無かったのでちょっと意外ね。

19章 発生と分化

章タイトルは「遺伝子、発生、進化」となっていて17章から続くゲノム的な話かと思いきや、 19章は組織の分化とかの話だった。 この章もなかなか面白い。

胚からどう組織に分化していくか、という仕組みの話なのだが、凄い詳しく理解されているなぁ、と驚く。 こういう細胞がどう位置を知るか、みたいなのは、プログラマには馴染みの深い話にも思う。 機械学習だとpositional embeddingとかあるし、グラフィックスでも法線と接線で点からもう少し大きな情報を再構築するとかは結構あるよね。

やっぱり生物の話題は酵母とか線虫とかショウジョウバエとかでやるくらいがちょうどいいよなぁ。 ショウジョウバエは十分に複雑でありながら、理解出来そうなくらいには規模が小さくて、なかなか興味深い生き物だよな。

全体の感想:非常に良かった

正直、想像してたよりずっと良かった。

ブルーバックスというと学生の頃読んでた物理とかの話はだいたい読み物的というか、 ちゃんと基礎を積み重ねていくという本では無く、悪く言えば軽薄な話題を無理やり語るような物が多くて、 この本もそういう物なのかと思っていたが、そういう事は全然無く、 むしろ想定以上に普通に基礎から積み上げる事を意図した本になっていた。 本によっていろいろなので、ちゃんと個々の本を自分の目で見て判断しないといけないよなぁ。

基礎から積み上げる結果として、割と化学の知識を多く要求される。 大学受験の化学よりもだいぶ多くの有機化学の知識を要求される。そしてそんなのは持ってない。 大学受験の化学の少し手前くらいから一通り必要な物の解説はあるので思い出しながら進めてはいけるのだが、 当然一回読むだけで全部覚えられるなんて事は無い。 だんだんときつくなっていく。

また、化学以外でも、全体的に構成が、前半でメカニズムの解説をして、 後半でそのメカニズムを使って生物の実際の現象の話をする、という作りになっている。 後半に、前に出てきたメカニズムがバンバン出てくるのだけれど、当然ただ読んでるだけだと頭に残らないから出てきた時に忘れている。 前に戻って復習して思い出して、また前に進んで、また前に戻って復習して、、、と行ったり来たりがだんだん多くなってくる。 三巻の後半は特にきつい。 そのおかげで前半の定着度はそれなりになるが。

生物は生理学に比べてより化学に近い所からやれるので、ちゃんと全部分かった感じが強い。 実験の内容も終盤のいくつか以外は割と自分でも出来そうなレベルでちゃんと追える。 ちゃんと勉強したい、という気分だったので、生物を選択したのはなかなか良い選択だったな、と思った。

この本は単細胞生物でも多細胞生物でもどちらでも通じる話題の割合が多い。 逆に言うと組織の話題が少ない。例えば筋肉の機序を知りたいとか、肺の仕組みを知りたい、というような事には一切答えてない。 これは自分には良かった。やはりそういう複雑な話の表面をなぞるよりも、細胞という物にフォーカスして徹底的に見ていく方が、 しっかりと身についた感じがずっと強い。

あと、生物といいつついろいろな動物の違いとかはそんなに出てこない。 節足動物とそれ以外の違いとかそういうのを知りたい、みたいな人には向いてない。 細胞を中心として、その延長で分化とかを見ていく、という感じで、あくまで主役は細胞、と思った。

その代わり細胞についてはかなり深い理解が得られる。 この本よりも発展的な本もそりゃあるのだろうけれど、一方で人類の理解の先端のそばを通る事も多く、 かなり最近分かった事実などが重要な物で多く出てくるので、 扱っていない内容のうち難しいから落とされた、という割合と、人類がまだ分かってないから説明出来ない、 というのの割合は、重要な所に関しては後者の方が多いんじゃないかなぁ、と思った。 90年代の前半ではここまで生物の事は分かってなかったよなぁ、と思う。

自分は専門が近い都合でゲノミクスとかの話題に触れる機会がちょくちょくあるのだが、 そういう触り方は表面的であまりおもしろくないな、と感じていた。 だから今回はそういうデジタルで最先端「でない」、もっと土台となるような物をいろいろ見たいなぁ、と思って読み始めた。 この期待は十分に満たした部分と、いい意味で裏切られた部分の両方がある。

まず予想以上に過去の重要な実験についての記述が多かった。 これは生物学という学問の成り立ちや今の現在地点を知る上で、凄く良かった。 やはり重要な問いがあって、実験の工夫があって、なかなか分からない事を頑張って知っていく所でその分野の魂みたいな物が伝わると思う。 こういうのをすっ飛ばしてミクロな最先端の理解を見ても、薄っぺらく重要な所が分からないのはむしろ当然と思った。 実験の記述が詳しいのは本当に素晴らしい。 メンデルからの連続性みたいなものが体に入ってくるようで、非常に生物学的な何かを得られた気がした。

いい意味で裏切られた部分としては、ゲノム的な理解とそれ以前の生物的な理解の融合が非常に上手かった。 ゲノム的な裏付けを元に遺伝子とその発現としていろいろな現象を見ていく。 この遺伝子という単位がなかなかちょうど良い。塩基配列じゃなくて。 もともと遺伝子という単位で研究が進んだのもそうした理由だろう。 多様な生物的な話が遺伝子の発現という視点で理解されていて、そこには感動がある。 しかも遺伝子の話が中心じゃない所がいい。 まず生物学的な現象があって、それについて過去のどういう重要な実験の結果どう理解するようになっていったのか、 という説明があって、その理解をさらに深くしていく感じでだんだんと遺伝子発現的な所になっていく説明が良い。

また、生物学の近年明らかになった事がいろいろと分かるので、この90年代から最近までの大きな発展が分かって、 この分野のダイナミズムというか、ここ数年のホットさが印象的だった。 しかも明らかに今後10年くらいでまた凄くいろいろ進みそう、という事も分かって、 この分野を専門に研究するのは未来があるなぁ、と思った。 素粒子物理とかなんかそういう感じしないよねぇ。

生物をさらに学んでもいいな、という気もしているし、ふたたび生理学を学んでみても良い気もしている。 今なら前に勉強した時よりもっと深く理解出来ると思うし。 どうしよっかなぁ。

この本、軽い気持ちで始めたが、一巻の途中まで行ったら思った以上にゴツくて、 1ページのサイズが小さいとは言え400ページ以上、これを三巻全部読むのは無理かなぁ、と思っていたが、無事最後まで読んだ。 いやぁ、頑張った。