ノートは MITx 7.00x Introduction to Biology - The Secret of Lifeの受講記録 で定期的に更新していたけれど、先程最後まで終わった。

終わった達成感を皆にも見せたいという事で別エントリにする。

どんなコースだったか

生物学の入門コース、という事になっている。 geneticsとbiochemistryと分子生物学とrecombinant DNAとgenomicsをそれぞれやって、それらを組み合わせて生物の理解を深める、というもの。 遺伝学と分子生物学というかセントラルドグマ的な部分の話の比重が重い気がする。

逆に、細胞生物学的なものは薄い気がした。 例えばクエン酸回路とかの話はあまり無い(でもなぜか無酸素呼吸の方は結構やった)。

タンパク質の構造とか、ゲノミクスとの関連やそれをmutant huntとかを組み合わせていろいろ頑張るような話は凄く詳しくやった。 教授がヒトゲノムプロジェクトとかの偉い人っぽいので、その辺はさすがに詳しく、非常に現代的。

また、特定のトピックについて、例えばFamilia Hypercholesterolemiaについて深く突っ込んでやる、 みたいな事を幾つかやって、それらを幾つか並べると全体的な生物学のシステマティックな構成のようなものが浮かび上がる、 というような作りになっている。 そのおかげで深く突っ込む事は非常に現代的な所までやれて、興味も持てて勉強になる。 しかもその過程で生物学のそれぞれの分野がどう活かされるのか、という事は自然にわかるようになっているので、 単に個々の事例に詳しくなるというだけじゃなくて全体的な生物の理解は深まる。

一方で選ばれなかったトピックについては全く知らないままなので、 普通生物を勉強したら知ると期待されるような事もさっぱり入らなかったりする。 これは現代的な生物学なら仕方ないんじゃないかなぁ、という気もした。 昔は生物に関する知識が限られていたので皆がやる共通の入門的な話題、 というのがありえたと思うのだが、 最近はいろいろな分野でいろいろな理解が進んだ結果、 全部をやる事はできないし、その時にどれを選ぶべきかもあまりコンセンサスが得られないんじゃないか、 という気がする。

自分としては アメリカ版 新・大学生物学の教科書 で網羅的に学んだ上で、 このコースで特定のトピックに深く突っ込みつつ全体像を得るという感じに相補的に学べたので、とても良かった。

また、Introductionという名前から想像するよりはずっと高度な事をやった。 これがイマドキの生物のIntroductionか〜と感動するような内容。 上記の教科書もかなり深い内容で驚いたが、このコースの方が選ばれたトピックに関してはさらに深く、 現代の最先端に近い所の話題までやっていた。 むしろこの次のコースはどうこれがアドバンスドになるのだろう?と疑問に思う部分も多かった。 この辺は次のBiochemistryのコースをやったら分かると期待している。

実験の話が詳しいのも良い。特に過去にあった実験の話が詳しく、課題も良くできていて自分でもやれそうなくらいの理解度が得られた。 Labのビデオも実際に実験をやっているような気分がある程度味わえて良い。 当時の分からない状態で使える道具を使ってどうやって知りたい事を知るのか、という事に関して、過去の偉大な(だいたいはノーベル賞をもらっているような)創意工夫を学べて感動もある。 逆に最近の話題の実験はブラックボックス的に感じる部分が一部あった。これは仕方ないとも思うが。

あと、元論文(またはその英訳)についての言及が多く、よし、自分も読むか、という気分になった。メンデルとワトソンクリックの論文は読んだ。 こういうのは学部の教養をしっかり学ぶ時の良い経験と思う。

教師は情熱的に喋り、内容も一線の研究者の講義だけにあるような臨場感があって、生物学が好きになるような素晴らしいコースだった。

分量が多くて大変!

想像以上に膨大で大変だった。開始したのは7月の19日となっていて今日は10月6日なので、三ヶ月くらいかかっている。 毎日ずーっとやってたという訳でも無いが、毎日3時間以上くらいを週5日くらいやっている事が多かったんじゃないかなぁ。

動画が1 Unitがだいたい3つのSequenceとテストになっていて、一つのシーケンスが幾つかの動画とクイズで構成されていた。 自分はだいたい1つのシーケンスを一日で終わらせていた。 これは結構たいへん。 さらにテストが結構ゴツくて、2日くらい掛けていた。

これが途中のExamも一つと数えると13週分。まぁ三ヶ月くらいは掛かる計算になるね。

しかもテストがめちゃくちゃ大変。 難しいというのもあるのだけど、全体的に言われている場所を探すとかに凄い時間が掛かる。 例えば塩基配列の46765番のAがGに変異しました、 みたいなものに対して、まずこの場所を探すのが大変。 それが何度も続くので辛い。

しかも課題が複合的というか、 家系図を見てgenotypeを予想して各ゲノム配列を見て〜という感じでそれぞれの問いがつながっているので、 一つ終えるのに凄い消耗する。 こりゃ大変だ。

そういえば大学受験の勉強とかでも演習書をやるというのは疲れる事だったなぁ、というのを思い出した。 問題自体がわかっている事でも題意を理解して解く、というだけで結構疲れるのだった。

しかもなんかwebアプリみたいなのでいろいろやる課題が多くて、webアプリの説明を毎回読んで新しいアプリの使い方を学ぶ、 という必要があって、この新しいアプリの使い方を覚えるのも地味に疲れる。 とにかく大変だった。

後半の方は、これ、MITの学生はみんなやってるのかなぁ、と思うくらい大変だったよ。

ただその苦労の甲斐あって、どういうアプリがあってどうやって作業を進められるのか、というのがちゃんと体験できてよかった。

なんかプログラマがこの辺すっ飛ばしてタンパク質構造の予測とかゲノム配列の決定のプログラムの話とかやっても実際の所が良く分からないのだけれど、 こうやってちゃんと手を動かして頑張って課題を解いていくと、どういう道具立てがあるから何が出来れば良いのか、を自分で考えられるようになって良い。

こういうのはやっぱり苦労しないと身につかない所なので、大変なのは意図したデザインと思う。

総評:大変だったけど素晴らしいコースだった、受けてよかった

想像以上に苦労したコースだったが、おかげで生物学という分野の全体像というか生物学内の各分野の立ち位置とその関係のような事が良く分かったし、 また生物学自体の知識もとても深まった。 この前に読んだ教科書の良い復習にもなっていたし、 教科書に欠けている事もいろいろと学べて、非常に知識がしっかりとした手応えを感じる。

また、非常に面白かったし、最後のガンの治療とかを見ると、多くの事がちゃんと理解出来るようになっている事が実感できて、 やった甲斐があったなぁ、としみじみと思えた。

いやぁ、生物面白いね。もっと勉強しよう。