流行から外れるまでの制限時間
無知なプログラマは、新技術の素晴らしい、というセールストークを素直に聴く事が出来、その素晴らしさを素直に受け入れる事が出来る。 この時、自分の知った事を発表する場も多く、皆も聴いてくれて、反響も多い。
だがそうしてその技術と長く付き合ったあとに、その技術がすたれて、新しい流行の技術が来た時。 何も分かってない人はそのセールストークを素直に受け入れられるが、前の技術で一定の理解のレベルまで到達してしまっていると、どうもその中には多くの嘘が含まれている事に気づく。 だいたいは本家の言う事にはそれほど嘘は無いのだが、周りでそれをもてはやす人たちの言う事は明らかに間違っいる。
この段階になると、それまでのようにただ思った事を発言したり発表しても、誰も反応してくれなくなる。自分の言いたい事を発表する場も機会も急速に無くなる。 というのも、言いたい事なんて古い技術の話と、流行りに乗った発言の間違いを指摘するくらいで、前者なんて誰も興味を持たないし、後者はただあら探しして水をさしてるだけに見える(実際水をさしたいのだろう)。
エンジニアは、テクノロジーの流行りに、何も考えなくても一体となれて、その発言が当然のように皆に反響を持って迎えられる時期が、むしろキャリアの最初に来る。 そしてこれは、実は結構短い制限時間がある。
この制限時間が終わったあとはどうするべきか?
注目を受ける事に慣れてしまった人の中には、制限時間が終わってしまったあとにも、たまに自身の間違いに気付いていながら無知の人として振る舞う、という事をする人も居る。 これはそのまま何も知らない新人と同程度の注目を集め続けるが、どこか無垢に受け入れてる人とは違いが出て、流行の世代を重ねるにつれてだんだんと冴えない感じになる。 だから長期的にはこの路線はあまりオススメ出来ない。
エンジニアがまともに存在感を保ち続ける為には、この最初の制限時間内にもう一段上のステージに辿り着く、というのが望ましい姿と思う。 ただ何も知らない新人と一緒になって騒ぐのが、もういいや、と思えてしまうのなら、もっとマシな事を発信すればいい。
本当はそのステージに立つのは、この制限時間が終わったあとでも問題無いのだが、ひとたび自分の言う事を誰も聞かなくなったあとから始めるのは面倒が多い。 また、聞いてくれない時期にいろいろこじらせてしまうと、表に発言出来ない人になってしまったりもするの。 やはり制限時間内に上のステージに辿り着く方がスムーズだ。
ただ、もっとマシな事を発信するのは、ただセールストークを受け入れて無垢な思いを発信するよりは大分多くの事を要求されて、そのギャップは結構大きい。 なので制限時間が来た瞬間、突然存在感を保つ難度は跳ね上がる気がする。 といってもそんな大した大変さじゃないが。
何にせよ、この制限時間の存在に自覚的で居て、自身の立ち位置をコントロールすると良い事もある気がする。 特に制限時間が終わった時に、変にこじらせず、自身の本来の影響力に立ち返ってそれを受け入れる方が、先の事を考えると無駄が少ない。