自分がUSに行ったら、プログラマとしてより大きなチャンスはあっただろうか?
Kazuyoshi Katoが、USの方がチャンスはあるのは当たり前じゃないか、的なツイートをしてた(という訳でも無いが)
https://twitter.com/kzys/status/942775362437627904
ツイートの主旨はおいといて、USの方がチャンスがあるってそんな当たり前だろうか?と思ったという話。
自分は2010年ころ、USに行くか会社辞めるかで悩んでた事がある。 当時は日本にあまり魅力あるプログラマの仕事が見えず、USで働くか旅人になるかのどっちかかなぁ、と思っていた。
あの頃はVSとかDevDivのチームに移ろうかなぁ、と思ってた気がする。 それに相当する仕事は、まぁ日本には無かろう。
ただ、そういうドメイン的な事を置いておいても、そろそろさらなる自身の成長の為には、もっとチーム自体のレベルが高い所に行く必要はあるな、と思っていた。 で、それは、日本でも探せばあるだろうが、なかなか見つけるのは難しいだろうな、と思っていた。 一方でUS側のopen positionを社内サイトで見てると、結構自分の求める条件を満たす物は多く、当時の状況なら、USの方がチャンスがある、というのにも、割と素直に同意出来る。
なお余談になるが、自分はそうしたチームのレベルが一定以上じゃないと発揮出来ないようなエンジニアリング的な経験、という物の価値は当時ちょっと疑っていて、そんな場所限定でしか発揮出来ない類のノウハウを貯めるのに人生を消費して良いのか?と思っていた。
話を戻して。 当時なら素直に同意出来た事だが、昨今ではあまりそうは感じなくなっている。 やはり機械学習の影響がでかい。
具体的には最近自分がやった仕事を並べると、
- リクルート住まいカンパニーでsumoのレコメンデーションの開発
- クックパッドで料理画像の認識
という感じだ。
最初のリクルートの方は、自分は当時、Map Reduceとか触りたいと思って入ったチームだったので、インフラ側だった。 この時に機械学習側の仕事が出来たのは、単純に「凄くスコアが悪くてどうにかしないといけない」という状態と、「イテレーションを早く回すのに理論家側だけではAWS周辺の知識が足りなかった」という2つの事情により、ちょっと特別に参加出来たみたいな所がある。
どちらもよくあることなので凄く稀な偶然、とまでは言わないけれど、偶然的な要素があったのは間違いない。 意外と良いスコアが出てたら私がチームの垣根を越えて理論側に入れたかはかなり疑わしい(というか希望を出して一度断られている)。
しかもその次の仕事も含めて、「自分のポテンシャルを思えばもっと凄い仕事が出来る!」と思えたかというと、そうでも無い。 どちらかといえば自分の数年間の旅人期間のさぼりの結果、自身の準備不足を嘆く事の方が多かった。
アクセス数はどちらも相当に多いし、データも相当な規模であり、しかも凄いコアな所に中心メンバーとして関わらせてもらった(というと盛り過ぎかもしれないが)。
プログラマとして、自分よりベテランな感じの人は居なかったが、機械学習としてはチームや組織としては私よりどちらも経験豊富だったので、あまり組織的な物が自分の仕事の足かせだった気もしない。
例えばどちらの仕事も論文を書かせてもらってるが、これは結構自分の能力からは過ぎた仕事で、僥倖と言って良いレベルに思う。
自分がUSに居たらもっと良い仕事は出来たかもしれないか?と言われたら、まぁ良い仕事が出来た可能性はそれなりにあるだろう。 だが、日本よりもそのブレが大きいか?というと微妙に思う。
結局、自分がやらないポジションが幾ら多くても、あまり自分には関係ない。 自分がやる事になりそうで面白い事がどちらが多いか、というのが大切に思う。
USの方が自分にはチャンスがあったか?というと、ここ数年は結構怪しいと思う。 例えば7年前にUSに渡ってVSチームでなんかバグとか取ってたとすると、その延長の2017年の自分が、今の自分より良かった気はあまりしない。 たぶん機械学習には完全に乗り遅れていただろう。 7年なんて二回shipしたら終わりだからね、いやほんと。
例えばGoogle Translateのチームでバリバリ機械翻訳やったりしてたら、今の自分よりは大分良いプログラマになっていたとは思う。 そしてその仕事はUSにはあっただろう。
ただ、それを自分がやれてた気はあまりしない。 能力とかもそうだけど、そもそもseq2seq learningとかはgoogle translateが出てきて初めて知ったくらいだ。 以前から目をつけてたという訳じゃないし、やりたい、と思ってた訳でも無い。それが生まれて初めて興味を持ったのだから、生み出す側に回れた可能性は無かろう。
USに居る為にはむしろ無職になりにくく、現状維持とかその周辺の手の届く所へのバイアスが凄く大きくて、なんかここ最近の大きな変化に対応してた自分、みたいなのが全然想像出来ないんだよなぁ。
一線でやってるトップな人達にとってUSはチャンスが多い、というのは分かるが、自分くらいのレベルだとここ数年はむしろ日本の方が良かったんじゃないか?という気もする。
情けない話と思うかもしれないし、実際ある程度はしょぼい話だけど、でもそんな卑下してるつもりもない。 日本でもトップとは言わないまでもかなり良い線行ってる仕事は増えてきていて、それは結構やるチャンスあるよ、という話なので。
なお、最近の数年がそうだった、というのは結構自信を持って思うのだが、今後数年がどうかは良く分からない。
機械学習の力を手に入れたら、USで頑張る方がチャンスが大きい、という可能性はあるよね。実際どうなのかなぁ。