【書籍】今を生きる思想、ジョン・ロールズ
【書籍】今を生きる思想、ジョン・ロールズ
聴き始め 2025-07-31 (木)
最近選挙があったので、政治についての関心が少し高まっているため、何か【書籍】自由論みたいな感じの、もう少し新しい本は無いかな? と思っていたところ、ロールズとサンデルの名前が良く出てくる。
ということでロールズの正義論はそのうち和訳を読もうとは思っているが、まだそこまでやる気は無い。
そんな折、audibleがまた月99円セールをやっていたので何か聞くか、ということで、前から気になってたロールズで検索してこの本が聴き放題枠だったので聴き始め。 まだ最初の方しか聴いてないが、入門にはこのくらいでいいかな、という気はしている。
著者の挟む例がいちいち納得しがたい
序盤の正義の不可欠さ、あたりまで聞いた印象。
ロールズの主張は分からないが、著者が挟む例で、負担に応じた分配がないと正義とは言えない、 みたいな例が、無駄に左翼的過ぎて納得がしがたい。 なんか大変な仕事をしている人はたくさんもらうべきだ、みたいなことを言っているようにしか聞こえないが、 それだと負担では無くマージナルな生産に一致していれば別にいいのでは?という気がしてしまう。
大変である、というのは、別に多くを得る条件ではないよな。 ギタリストもサーファーも大変だが、利益を多くえるべき理由は何もない。 負担というのは大変さだけでは無く、それを求める側の強さも関係していて、それはまさに希少性に応じて価格が決まるという経済学の話になってしまうが、 そうした価格で決まる分配が正義ではない、と言っているような例が多かった。 それなら、では大変さではない負担についての調整のメカニズムを何かしら決めないと、 その分配が正義に反しているかどうかは良く分からないと思うのだが、そういう話は出てこない。 単に大変な人は多くを得るべきでそうでないなら正義でない、と言っているように見える。
経済学的なものに反する例を挙げるのなら、それがなぜ正しいといえるのか?という話をするのかと期待して続きを待つが、 全然そういう反論に対しての話も出てこない。
たぶんロールズはそういうことを言っている訳では無く、義務と権利みたいな話をしたいのではないか、 という気もするのだが、著者の挙げる例がいちいち共通の土台としては受け入れがたいものばかりで、 もっと困難で深刻な対立がある中でも共通の土台を構築しようという話の流れに説得力が無くなってしまっている。 なんでこんな例を挟んでしまったんだろう?
あと勝てば官軍の話も、実際に賊軍と言われていた方が勝って官軍になったという話であって、 著者の言うように勝つかどうかに関係なく官軍かどうかはあらかじめ決まっている、というのは違うのではないか。 こういう本題と関係ない所で「いや、それは違うんじゃないか?」ということばかりを挟むので、 素直に本題を聞くのが難しい…
あまりにも酷いので原典にあたる
【書籍】正義論より。
いや、はるかにちゃんと書かれてるやん…
原典の方は功利主義を超える思想の基盤を提供しようとしているため、 功利主義との対比はそれなりに紙幅が割かれている。 効率性なども当然検討対象には入っていて、この本にあるようないかにも経済学に反するような正義を「明らかな正義」として最初に列挙するようなのとは正反対の立場とすら言える。 どうしてこの原典を読んでこんな解説になってしまったのか。
ただ内容の要約が誤っているという訳では無いので、著者の我田引水っぷりを割り引いて読めば役割は果たしているかもしれない。
それにしてもこれだけ経済学的な考えとの整合性や反する所を丁寧にやっている本を解説する新書が、 どうしてこんなに経済学全無視の謎のマルクス経済学みたいな対立構造を前提とした話ばかりにしてしまうのだろう?