2013年2月15日に購入したVTZを、先日の2025年9月15日に廃車にした。

買った時のブログは以下。

12年前だ。30代中盤。ついこの間のような気もするが、自分の中や周囲でいろいろな事が変わっている。 これだけの期間乗っていたので、いろいろな事もあり、思い出深いので、少し追悼として振り返りたい。

購入したころは、シリア情勢が悪化してしまって、中東を回るのを中断(今から振り返ると断念)して、日本を回り始めて、ちょうど静岡で前のバイクが壊れてしまって友人に迎えに来てもらったりして帰った後だった。 壊れたバイクはパーツが無いのと軽くて高速でふらつくので、 次はもう少し重くて丈夫でパーツが多いものにしよう、と思い、VTZを買った。

購入後の走行距離は63463km。 5万kmくらいまでは本当にバイクばかり乗っていた。テントと寝袋とギターを積んで日本中を回り、 長野や熊本、高知、伊豆などは本当に素晴らしく、バイクでしか味わえない最高の体験をした。

中古のバイクを買って、直しながら乗っていくのは楽しかった。 掛けた時間を労力とするなら明らかに新品のバイクを買う方がよかったけれど、 そうした経験自体もバイクという趣味の一部だったように思う。

昨今は故障も増えてきて、あまり遠くに行くのも不安が多くなってきていた。 奥多摩あたりにはもう一度行きたいのだが、首都高の向こうまで行くのはなぁ…という躊躇が先に立つ。 いや、12年前ならもっと無鉄砲だったので、気にせず遠くに行っていたと思う。 実際前のバイクは、静岡で本当にどうしようもなくなって廃車にしている。 そうした苦労は楽しい思い出だが、もう一回やりたいとは思えない。 知らなかった当時と知った後の今の違いでもあるだろう。

結果として、6万km前後からあまり走行距離は伸びなくなってきていた。 去年は高速も一回も乗ってないと思う。 また、同じ地域に長く住むように変わったのも、ツーリングの億劫さをあげている。もうこの近辺は一通り回りつくしてしまって、 走りたいと思うところまで行くのに日帰りでは無理になってしまった。 楽しみの前が一日くらいかかってしまうことを思うと、 どうしても何泊かするような長距離ツーリングになってしまうが、そこまでのやる気はもうあまり無い。

また、街乗りの頻度が増えると、VTZの重さがつらいと思うことの方が多くなった。 駐輪場でUターンするのは大変だし、雨が降っているぬかるみを引いて歩くのは危ない。 いつかは怪我をするだろう。 自分自身も歳を食っている影響もあるかもしれない。 明らかにスクーターの方がいい、と思いながらも、壊れるまでは乗るか、と思って乗っていた。

12年の間に、経済状況もだいぶ変化した。12年前は労働意欲がまだまだ低く、資産も増やしている途中だったので、 生活費を下げたいという思いはまだ結構残っていた時期だ。 昨今は必要最低限を超えて労働をしている結果、むしろお金で快適さを買う方向にいろいろと進めることで労働意欲を高めようとしている。 シェハウス暮らしもやめて、定住の度合いも高めた。 そうした自分のライフスタイルの変化に、いかにも前の時期の遺物として最後に残っていたものがVTZだったようにも思う。

12年で、疲れることはあまりやりたくないという思いも強くなった。 もう名古屋より向こうに東名で250ccで行くのは嫌だな、と思う。 キャンプもレジャーとして金をかけてやるならいいが、単に寝るだけなら素直にビジホとかでいいや、と思う。

去年のセルモーターが故障した時に、廃車にするかは多少迷っていた。そして次は廃車にしよう、とも思った。 今回フロントフォークのオイル漏れが出て、自賠責の更新が来月であることに気づいた時、 もう自賠責は更新せずに廃車にしよう、ということが自分の中で決定づけられた。

今でもフェリーや地方の高速に乗るのは悪くないので、また250ccを買いなおすという選択もあったのだが、 250ccを買うなら住む場所も変えたいし、しばらくは変える気はないな、とも思った。 やはり次は、街乗りをメインにしつつ少し三浦半島を回ったりくらいにしたい気がする。 そう考えると原付2種のカブか小さ目のスクーターかな、となった。 三浦半島を出て違う地域に行ったら、Ninjaとか欲しいな、という気持ちはあるが、それは今では無い。

という事でVTZを廃車にしてDio 110に乗り換えてみたところ、明らかに失われたものがある。特に高速に乗れなくなったのは大きい。 遠くどこまでも走っていける何かでは無くなったよなぁ。

ただ一方で、乗り換えてみたら想像以上に得るものが多く、 思った以上にVTZは今の生活とは馴染んでいなかったんだなぁ、という気持ちの方が強くなった。 自分はもう30代では無いということだよなぁ。 今は、残念という気持ちよりは、ありがとうという気持ちが強い。

自分の30代から40代にかけての一つの時代の象徴でもあり、いろいろな経験をさえてくれたバイク。 あまり良い扱いができていない時期もあったけれどここまで走ってくれて、丈夫で良いバイクだった。 本当に素晴らしい経験がいろいろできて、楽しい30代、40代を送らせてくれた。 バイクはそれが無い時よりもずっと世界が広がりつつ、 車を保持すると出てくるしがらみのような物は少ない、 広くて自由という、自分にとって凄く良いバランスのものだった。 一緒に歳をとって、見たことないもの、知らないことを一つずつ一緒に見たことあるもの、知っているものにしていく日々を過ごしてくれた。 バックパッカーが、定住フリーランスサーファーへとなっていく成長の物語でもあった。

本当に楽しかったし、自分は今よりも若かったし、そうした思い出はキラキラと輝いていて、かけがえのないものになっていると思う。 でももう十分乗ったわ。もういいや。でも楽しかったなぁ。 ありがとう、VTZ 250のおかげで、すごくいい時期を過ごせたよ。