なんとなく布団の中でぼんやりと考えていた事のメモ。

財政赤字がどのくらいだとまずいのか、というのは、正直な所良くわからない。 ただ、凄く一部の人たちを除けば、まぁ凄く大きいとまずいだろう、という同意はある。 今回は一部の例外の人たちの事は考えず、まぁ主流派の中の意見の相違くらいに焦点を当てる。 イメージとしてはクルーグマンとマンキューの両方が同意しそうな範囲を考えてみる感じ。 その前提で、「凄く大きい」とはどのくらいなのかをざっくり考えてみる。

まず、累積債務が凄く大きいとどうまずいのか、の、一番反論が少ない確実なものは、 インフレになった時にそれを沈静化する痛みがデカくなりすぎる、というものだろう。 他にもいろいろ言われている事はあるが、考えているのは「上限」なので、同意が確実にとれるものだけを考える事にする。 つまり上限というのは「そこまではOK」では無く、「まぁここまで行ったら駄目なのは間違い無いだろう、もっと下の時点でまずいだろうけれど」と思うようなものだ。

で、インフレになった時にまずいというのは、利払い費が高い状態でインフレを抑えるためには相当の財政引き締めが必要になるので、 ようするに高い失業率をかなりの長期間続ける感じになるからで、 イメージとしてはめっちゃ不景気なのに増税をかなり続ける感じになる訳だ。 まぁそれは嫌だろう。

ではどのくらいだとインフレでまずいのか、という事を考える。 ざっくりと、利払い費がGDPくらいだったらまぁまずいのはほぼ全員の同意はとれるだろう。 GDPを500兆円としてインフレが発生している時の長期金利をざっくり5%とすれば、 10*1000兆円、つまり1京円の累積債務はまずい。 さすがに利払い費にGDPは行き過ぎだろうとして、ざっくりこの半分くらい(利払い費がGDPの50%)でも、 まぁまずかろう。 という事で累積債務が5000兆円くらいを上限の目安と考えてみる。

累積債務5000兆円はどのくらいの数字か?

次にこの累積債務が5000兆円、という数字について、現状などと照らし合わせて考えてみる。

現状はざっくり1100兆円くらいとすると、まぁ5倍くらいだ。 もうすでに死んでいる、という状態では無いが、全く無意味な上限というほど遠くも無い気はする。

昨今の財政赤字は医療費と社会保障費の国庫負担分の影響が大部分と思うので、 高齢化でどのくらいこの上限にバウンドしうるかを考えてみる。

ざっくり高齢化は2040〜2060の20年間の問題として、この間の財政赤字について考える。 20年間で4000兆円とすると、1年あたり200兆円。 2040年までに累積債務が1100兆円という事は無いのでこの値は多すぎだが、少なくともこれより安くないといけない。

現在の財政赤字がざっくり30兆〜50兆あたり。今後増えていって2050年では100兆は超えそうな気はするが、 常識的な対応を国家がしていけば、200兆円はまぁ行かないかな、とも思う。 5000兆円はまずい上限なので、 当然いかなさそうな範囲でないと困ってしまう訳だが。

この数字についでの雑感

まず雑な議論だが、思ったよりも意味のある数字になって驚いた。 意味のある、というのは、現状のGDPとか債務額から見て、そこまで桁が違う無意味な数字にはなってない、という意味。 前提がかなり「まぁこれくらいは同意出来るだろう」と思えるような大きな額なので、 全くバウンドしそうにない拘束条件になっても驚かない所だが、 実際はそこまで無意味に大きすぎる額では無いように思う。 というかそう思ったからブログに残しておくか、という気持ちになってこのブログを書いている。

上限として意味がある、と思うのは、それより上でもいいと思う人とは議論しなくて良い、 少なくとも普段の議論とは分けないといけない、と思うラインにはなっていると思った、という事でもある。 そういう立場も別段ありえる事とは思うし正しい可能性もあるが、 普段の政策論議と一緒には出来ないだろう。

5000兆円までは大丈夫、とは誰も思わないだろう。先にも述べたが上限というのは「これはまずい」と皆が同意出来る額であって、 それより下が平気という意味では無い。 もっといえば実際にやばいのはそれより下のどこかだと皆が思っているはずなのだから、 まずいのは下のどこかだ。 でも上限として、これより下の皆が納得出来るラインを探すのは、軽く考えた範囲では難しかった。 利払いがGDPの50%はまぁまずいだろうが、30%はどうだろう? まぁまずいとは思うんだが、一方でこのくらいだとインフレを抑える痛みを「我慢して払う」というのも現実的な範囲になってくる。 人によっては今の消費税増税や高齢者の医療費の削減よりはこちらの方が良いと思う人も居るかもしれない。 一方で現状の10%でも十分まずいと思う人もそれなりに居るだろう。実際累積債務がGDPを超えるのはまずいのでは?と昔は思っていた人も多いと思うし、 現在の2倍は、すでにとんでもない!という人は一定数居る。 現状がすでに高すぎる可能性はそこまで無視出来るものでも無いだろう。

GDPの100%がまずそうなのはまぁいいとして、半分、という操作には意味は無い。 中には50%の時点で異論を唱える緩和派でもまともな人はありえるとは思う。 一方でまぁだいたいはまずいとは思うだろうから、上限としてはこんなもんかなぁ〜とも思う。

長期金利が5%という前提は明らかに低すぎる。インフレ時の話をしているが、長期金利5%は平時のちょっと高めという範囲に思うから、 実際はもう少し高い方が現実的だろう。 でも妥当な範囲の設定が難しいので、まぁ高すぎるという人は確実にいない5%を採用した。 今の日本から見れば結構高めだし。7〜8%くらいで考えるのが妥当なんだろうな、という気はする。

GDPの想定も難しさがある。生産年齢人口が大きく減るのだから生産は減る想定であるべきだろう。 ただ一人あたり資本投下が増える可能性がそれなりにあるので、どのくらい減らすべきかは同意を得るのが難しい数字でもある。 もっと低いのはそうだろうがどのくらい低いかは分からない、というのが正直な所で、 生産性の向上とかもあるので、とりあえず500兆円で計算しましょう、というスタンスになった。 まぁ丼勘定ではそんなもんでもいいだろう、というのは比較的多くの人が同意出来る数字ではなかろうか。

医療費及び社会保障費の国庫負担がどのくらいになりそうかを人口動態から概算するのは、たぶんこの議論ではやった方が良い。 記憶にある数字だけでは答えが出ないのでやらなかったが。 2050年あたりでもざっくり100兆円くらいだろうと勝手に思っているが、本当にそのくらいかは結構怪しい。 どちらかといえばこれは予想というよりはターゲットだよな。 国家運営をこの辺を目指してやっていく、というような。 まぁ目指しているのはもうちょい下だろうが。

一回くらいデフォルトしてもいいんじゃないか、と思っている人も居るかもしれない。 この辺は「痛み」がどっちがマシか、という話と、どのくらいまでなら許容出来るか、という話だよなぁ。 現実的な話として、高齢化がある程度の痛みを伴うのは仕方ない気もするし、 国が滅んでしまうほどの痛みという訳では無さそう、 というのも、まぁそれはそうなんだろう。 そういう点では、大多数の一般大衆はそんな事を気にせずに日々を楽しく生きていけばいい、という気もする。

現実的な話としては、財政赤字200兆円はまぁ行かない気はするよな。 よっぽどのポピュリストとかを除けば、これよりは下にしようぜ、というのに異論は出ないだろう。 どちらかといえば100兆円なんてとんでも無い!という人の方がずっと多いだろうな。 ただ100兆円という数字はそれなりになってしまう可能性のあるラインだし、なぜ100兆円を超えると駄目なのか? をちゃんと説明するのも難しいだろう。 実際駄目では無いかもしれない。この辺になると分からないよな。

常識的な態度としてはやばい上限のギリギリについて話し合うよりも、 まぁまずくないだろうと思える範囲にずっと収めるように考えるべき、という類のものだろう。 ただ高齢化の一番ひどい時期をこれから迎える我々としては、そういう平時の態度よりは限界に近づく事は要求されてしまう気はする。 それ自体はそこまでおかしな話でも無いと思う。 でもその限界はどの辺なのか?今回のブログのポストはそういう話だ。

消費税を上げるべきかどうか、という話は良く目にするが、その前提となる累積債務はいくら以下であるべきか、 という話はあんまり見かけないよな。 皆もいくらくらいが上限だと自分が思っているのか、書いてくれよ。 実際それが無いと某背理法理論で無税国家でいいという話になっちゃうしね。 5000兆円くらいなら全然問題無いと思っています、という人と話し合うべきは消費税じゃなくて財政赤字に対する見解だろう。

ちなみに自分はどのくらいかな。 GDPの8倍くらいに収めるのがいいんじゃないかな〜。 まぁ達成出来そうな範囲でなんとなくの目安をひいただけで、根拠は大して無いが。 今回のポストに照らし合わせると4000兆円、利払いは200兆円、GDPの40%。 まぁまぁでかい。自分はかなりの緩和派という事だ。

皆の頭にはなんとなく2000兆円くらいまでがいいんじゃないかな〜と思いつつ、たぶんそれは超えちゃうんだろうな〜、 と思っている気がするが、どうでしょ?まぁ財政赤字30兆円でも2060年までには余裕で超えちゃうのだから、 2000兆円で収まる事は無いはずだが。でもその事をちゃんと話している人はあまり見かけない。

3000兆円〜4000兆円あたりが現実的な議論の対象だろうけれど、 3000兆円という数字を出すとそんなのとんでもない!と大騒ぎする人がたくさん居るだろうから、 まぁ余計な事はしないで行こう、という話になっているのかもな。 政治家がそう思うのは納得は出来る。 でも政治家でない我々はここのスタンスは明らかにしても良いのではないか。

実際の所は利払い費がGDPの30%くらいまで膨れ上がった状態でインフレに向き合う感じになるんじゃないかなぁ。 それは結構つらい事ではあるが、日本はもうおしまいだ、という感じの話でも無いよな。 人によっては高齢化の一番つらい時期がその程度なんて、大騒ぎするほどの事じゃないじゃん、と思う人も居そうではある。 大多数の人はもうちょいマシに出来るんじゃないか?と思って日々政策論争を戦わせているのだろうが。