書籍感想: No Rules Rulesを読んだがいまいちだった
Netflixの会社の本を何か読みたい、と思って読んだNo Rules Rules、
読み終わったが、全体的にはいまいちだった。
メディアの話ばかりでソフトウェア開発の話がほとんど無い
何故かディズニーとかハリウッドとの比較ばかりで、ソフトウェア開発の話がほとんど無い。 だからtech companyでは普通の事を特別な事のように延々と語ってて、プログラマ的な興味とマッチしてない。
こっちはRxとかback pressureは社内でどうなのかとか、chaos monkeyの話とっかErik Meijerとかどうだったのとかそういうのを聞きたいのに、 著者が明らかにソフトウェア開発全然分かってない人で、表面的な話しかしない。残念。
話題だけじゃなくて、tech company的に起こりうる課題についての話が全然無い。
たとえば、Netflixは現場に多くの権限を委譲するモデルを採用しているようだけれど、 この トップダウン vs 草の根 的なのは、tech company的には良くある話題であって、両方とも良く採用されて長短語られている事に思う。
例えばtech compnayで草の根的なやり方で問題になる、多くのチームで同じ物を作りたがる問題とか、 よそのチームが作った機能と全然うまくくっつかなくて、なぜかこっちのページではこれが使えない、みたいな事が起こるのをどう防ぐのか、 という話が全然無い。そして昔ながらのステレオタイプ的なメーカー的なやり方といかに違うのかばかりを強調していて、 本当に全然分かってない素人が書いているな、という印象しか受けない。
Netflixはなかなか興味深い会社と思ったけれど、著者は駄目だな、というのが自分の印象。
error preventionがagilityを損なう、というのは興味深い主張
組織はerror preventionをしたくなるが、それがフットワークを重くする、というのはなかなか興味深い主張と思った。 確かに思いあたる事は多い。
出来の悪いCIやLintを自分が凄く嫌うのがなぜなのか、というのも、そういう視点で考えると納得出来る。
プログラマは自動化でエラーを無くすのを好むが、それのデメリットは軽視されてきた気がする。 error preventionをここまで悪い事として主張しているのは初めて見た気がするが、 なかなか説得力を感じた。
事実かどうかは良く分からない部分もあるが、こうした方向性を試してみる価値はある気がする。
給料を市場価格のトップにする、というのは興味深い
プログラマを会社が評価する、というのはうまくいかなくて無駄だとは自分も常々思っていて、 フリーランスのようにその場の市場価格でギャラを決める方が良いと思っていた。
Netflixの市場価格のトップを給料にする事は、このフリーランス的なシステムの良いところを正規雇用に取り込もうという姿勢に思う。 そして人が合わなくなったら手厚い解雇手当を与えて解雇する、というのもフリーランス的なシステムを正規雇用に適応した結果だよなぁ。 でもそれならフリーランスでいいんじゃないか、という気もちょっとしてくるが。
話を戻して、評価が無駄であるのは感じるところではあるが、では会社の限られた資金をどう給料に分配すれば社員が納得出来るか、 という時に、市場価格のトップというのは一つの答えではありえると思う。実際Netflixの給与水準は高そうで業界のトップクラスなのは知られている通りなので、 これは有言実行しているのだろうなぁ、とは思う。
一方で、その結果は年収4000万くらい払わないといけない状況になっている訳で、この理念を実現するのは楽では無いよなぁ。金があるから出来る、という事ではある。
また、凡庸のプログラマでも構わない雑用的な仕事というのはNetflixには無い、という強い意思を感じさせる事でもある。 開発では単に頭数が足りない、みたいな事もあるのでは無いか、という気もするが、そういう仕事はNetflixはしない、という事だよな。 単純に労働力をお金にするような仕事というのは結構あって、それをスケールさせて会社を大きくする、というのはやってしまいがちだし、 実際Netflixが本当にやっていないのかは知らないけれど、会社の哲学としてはそういう事はしない、と強く主張するのはアリな姿勢と思う。 そしてそれは、概ね正しい気もする。
他の会社が真似をしようとした場合、市場価格のトップの給料を払う、というのはなかなか難しくても、トップ20%の給料を払う、くらいだと実現出来たりしないかしら?
まとめ
本はいまいちだが会社としては面白そう。