真面目に読んでるフランス史の教科書はちょっと重い奴なので、もうちょっと軽い読み物的な物も欲しいな、と思い、フランスの現代史の新書として本書を購入。 期待以上に面白かった。

著者は割といろいろと決めつけて語る。 例えばミッテランの初期の大きな政府路線はインフレと失業率の高まりから失敗だったと言い切って、それを前提に話を進める。 たぶん左派には「あれはXXが悪かっただけで大きな政府というアイデア自体が悪い訳では無い」という意見もあると思うのだが、そういう所でもにょもにょした言い方にしない。

一方でこの決めつけは、少なくとも自分の目から見ると割と妥当な物が多くバランスも良いように感じた。著者は教養があるのだろう。

その結果、新書として成功していると思う。 分かりやすくて面白い。 掘り下げはそんな無いけれど、各大統領や首相の基本的な方針は理解出来るし、当時のフランスの空気感みたいなのも多少は感じる。

何よりこの新書が面白いのは、フランスの現代史が面白いからという気もする。 ド・ゴールといういかにもカリスマな英雄が居て、 それに敵意を燃やすミッテランが居る。

保守的な方もかなり独裁色が強かったりするし、左派もかなり左翼っぽさがあったりして 「実際こういうのに政権をもたせたらどうなるんだろう?」という素朴な疑問に答えてくれる。

こんなmajoritarianだっけ?多数派がすぐ出来るシステムでいまやってるってのは凄いな。 日本なんて小選挙区比例代表制くらいで文句言ってるのも結講居るのに。 現在のシステムである第5共和制は大統領権限が強く、かなり独裁色が強い。ド・ゴールがそれを意図して作ったのだから当たり前だが。

独裁者が生まれた経験は持っているのにこんなに独裁者が生まれうるシステムにしたのは面白いね。日本なら批判の荒らしでとても通りそうに無いが。 日本はあんまり独裁者の経験が無いのに何故か独裁者に凄い拒否反応あるよな。なんでだろう?悪いかどうかはやってみないと分から無い気もするが。

フランスの政治がすぐ極端に振れるのはあんま良くない気もした。この良くないというのはまさに日本人の国民性を持った日本人としての自分の見解だが。 もう少し漸進的に進める方が良いがする。 自分は日本の政治スタイルの方が合ってるのだろうな。

よその国の政治を見ると自国の政治の良いところが分かったりするよね。 ただフランス社会は日本より格段に難しい問題に多く直面していると思うので、フランスの政治の方が難しいと思う。 アルジェリアの独立を認めるとテロが頻発しちゃうし、独立を認めないと学生のデモが暴動に発展するし、どうしろって言うんだ?という気はする。

どうしたらいいかは良くわからんが不満にはとにかく声を上げて戦っていく、というのは、悪い事もあるが見習うべき所もあるよな。 やり過ぎも良くないしフランスはやり過ぎな気もするが、全体としての正当性が全然無いような自分の欲求をひたすらぶつけていって落ち着く所、というのは、それなりにバランスの取れた何かになってる気もする。 ミッテランとか結講いいよね。

自分はたぶんテクノクラートという事になるとおもうので、テクノクラートの支配を拒否して庶民の政治とか言われるとまじかよ、とか思ってしまうが、 実績だけ見ると庶民の政治は庶民の政治でそれなりな所には収まってるので、一概に悪いとも言い切れないのかもしれない。

田舎が発展に置いていかれる問題

フランスは田舎が多いので、社会の発展に田舎が置いていかれる、という事にはいろいろな試行錯誤があって興味深い。

そもそもどうするべきなのかね? 自分は結講日本の都会の底辺労働者とかと接点が多くて、彼らが結講きつい立場に居るのは見ている。

一方で日本の田舎での生活も結講してて、田舎の人たちとの接点も多いが、あまり田舎の人の社会は好きでは無い。 頑迷な老人がいろいろな試みを潰してただ補助金をせびり、若者もそうしたシステムに慣れてしまってあんまり「ちゃんと」やらずに、すぐに補助金に行き着いてしまう。

田舎と都会の間にある程度の分配はあっても良いと思うのだが、やはり分配は差を埋める程度であるべきで、基本的には生活は個人の労働のアウトプットに依拠しているべきとおもうのだよな。 要らない事をやってただ補助金もらう、となってしまってるのは良くない。

ただ基礎となるアウトプットを田舎でどうすべきか、というのも良く分からないよなぁ。 頑迷な老人が多いのは事実なので、 実際何かを始めるのには障害が多いのだよねぇ。 田舎で出来てそこそこ有意義で多少の補助金で埋める程度で「まあこんなもんか」という生活になるビジョンはなかなか見えない。

幸い日本は田舎の平地が少なく人口も少ないので、田舎は老人の生活保護と割り切って現状のシステムのままでもいいのかもしれない。 若者は都会へ出よう、という事で。 フランスはそうは行かないよなぁ。田舎がこんだけ広くて人が居ると。 実際田舎のデモはフランスの舵取りの難しさの一つだよな。

なお田舎の社会は嫌いだが、自然は遊ぶ対象としては好きだ。 なので田舎の暮らし自体は、たまにやる分にはアリだと思ってる。